
部下を厳しく叱責したら法的責任を問われる可能性は?(画像はイメージ)
【要注意】「えっ…」 これが部下への叱責が「パワハラ」に該当する行為です!
近年、業務内容を超えた過剰な叱責が「パワハラ」(パワーハラスメント)として問題になるケースがあります。そもそも、ハラスメントとして訴えられるような叱責というのは、どのようなケースを指すのでしょうか。また、部下を厳しく叱責した後、パワハラだと訴えられ休職や退職に発展した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。弁護士の永島徹さんに聞きました。
刑事責任を問われる可能性も
Q.上司が業務のことで部下を厳しく叱責した結果、部下から「パワハラ」だと訴えられたとします。この場合、上司が刑事責任や民事責任を問われてしまう可能性はあるのでしょうか。理由やパワハラに該当する行為なども含めて、教えてください。
永島さん「上司から部下への叱責行為がすべて違法行為に当たるとは限りません。業務上、必要な範囲の叱責行為であれば、違法と評価されることはありません。
ただし、例えば、部下の人格否定に当たるような発言、侮辱、威迫、長時間にわたる大声での叱責、他の従業員の前でのさらし行為など、必要性のないほどに追い込んでしまうような叱責行為は、いわゆるパワハラとして認められる可能性があります。
法律上では、民事において、不法行為や使用者責任だけでなく、安全配慮義務違反などによる慰謝料や、治療費などの賠償責任を負う可能性があります。
刑事責任としては、例えば、叱責行為の際に『手をあげる』といった有形力の行使が伴うようなひどいケースでは暴行罪や脅迫罪のほか、傷害罪や強要罪、名誉毀損(きそん)罪などに問われる可能性も考えられます」
Q.もし「パワハラ」と訴えた部下が休職したり、退職したりしてしまった場合はいかがでしょうか。法的責任を問われる可能性がより高まるのでしょうか。
永島さん「そうですね、パワハラを訴えた被害者側が休職や退職に発展した場合には、休職に伴う休業損害や、退職に伴う遺失利益の損害などが拡大する可能性が考えられるため、民事責任の損害賠償請求を受けるリスクが高くなるでしょう。
ただし、パワハラの訴えがあったからといって必ずしも法的責任が認められるわけではなく、パワハラがあったことと、それに伴って休職や退職に至った事実との因果関係を把握する必要があります。また、叱責と休職や退職との因果関係、予見可能性、精神疾患の診断や経緯など、さまざまな要因を考慮した結果として、パワハラに関して法的責任が発生するかが判断されることになります」
Q.部下から「パワハラ」と訴えられないようにするために、上司側や会社側ができることはあるのでしょうか。
永島さん「まず、仮に叱責をしなければならないシチュエーションだったとしても、その目的や、業務上の必要性があるのかどうかという点を明確にすることが重要です。叱責の内容についても、部下に対する人格の否定、攻撃や侮辱といった表現も避けるですとか、あとは『指導の時間を短時間に収める』『改善点のみを端的に伝える』といった工夫が考えられますね。
上司側については、会社による指導方法についての研修の実施、例えばアンガーマネジメントなどの研修を行うなどすることで、ハラスメントに該当するような叱責を未然に防ぐ対応が考えられます。
また、何かトラブルがあったときに口頭で伝えた内容を証拠として残しておけるように、指導名簿などで内容を記録しておくというのも有効です。
企業などの組織単位で実施する方法としては、『ハラスメント相談窓口』などの整備を社内で行ったり、調査や弁護士への依頼など第三者の機関との連携を迅速に行えるような体制を構築したりすることも重要になるでしょう」
* * *
部下を育成するためと思っても、「厳しい指導」と「パワハラに当たる指導」を混同しないことが重要です。指導方法が曖昧になっている場合は、上司側の教育やサポート機関の設立など組織単位で改善に取り組むことも必要かもしれません。
