クレーム客に拘束され、新人のミスを被った最悪の誕生日…疲弊した郵便局員が「踏切の幽霊」にかけた言葉に涙腺崩壊【作者に聞く】

クレーム客に拘束され、新人のミスを被った最悪の誕生日…疲弊した郵便局員が「踏切の幽霊」にかけた言葉に涙腺崩壊【作者に聞く】

その踏切には幽霊が眠るという
その踏切には幽霊が眠るという / 送達ねこ(@jinjanosandou)

クレーム客に理不尽な理由で長時間拘束され、心身ともにすり減らしてようやく局へ戻る。しかし、そこで待っていたのは、新人の入力漏れによる「未処理の仕事」の山だった。結局、自分がすべての尻拭いを引き受け、残業を終えた帰り道。夜道を歩きながらふと気づく。

「今日俺、誕生日じゃん……」

踏んだり蹴ったりの最悪な1日。せめてもの自分へのご褒美にと、コンビニで“ちょっといいビール”を買い、彼はあの「踏切」へと向かった――。

今回は、現役の郵便配達員たちが実際に体験した怪異を漫画化した、送達ねこさん(@jinjanosandou)の『郵便屋が集めた奇談』より、ホラーでありながら「涙が出る」「心に沁みる」と話題を呼んだ珠玉のエピソードを紹介する。
幽霊は何をするでもなく、そこに眠っていた
幽霊は何をするでもなく、そこに眠っていた / 送達ねこ(@jinjanosandou)
踏切に眠る_P003
踏切に眠る_P003 / 送達ねこ(@jinjanosandou)
踏切に眠る_P004
踏切に眠る_P004 / 送達ねこ(@jinjanosandou)
踏切に眠る_P005
踏切に眠る_P005 / 送達ねこ(@jinjanosandou)
踏切に眠る_P006
踏切に眠る_P006 / 送達ねこ(@jinjanosandou)

【漫画】本編を読む

■踏切に横たわる「静かな幽霊」

その町には、幽霊が出る踏切があるという。受験に失敗し、電車に飛び込んだ高校生の幽霊だ。恐ろしい姿で現れて人を呪うわけではない。ただ眠るように、静かにそこに横たわっているのだ。見えない人のほうが多いが、その幽霊の存在は町の共通認識になっていた。

その踏切が配達エリアに含まれる郵便配達員・水谷くんは、“見える側”の人間だ。踏切待ちのたび、否応なく視界に入ってしまう幽霊は、何をするでもなくただそこに在り続けている。読者からも「ホラー特有の怖さより、その静けさが印象に残った」という声が寄せられているエピソードだ。

■「お前知らないで行ったろ。飲もうぜ」

踏んだり蹴ったりの誕生日の夜。ちょっといいビール片手に踏切で幽霊と対峙した水谷くんは、ひと言、またひと言と静かに語りかける。「お前知らないで 行ったろ。飲もうぜ」――。

水谷くん自身も、受験や就活といった人生の分岐点で挫折を重ね、今の仕事に就いた人物だ。決して思い描いていた理想の人生ではない。ふがいなさや不本意さを抱えながら働く日々に、明確な正解などない。だからこそ、彼は人生ゲームを途中で降りてしまった幽霊の気持ちが痛いほどわかるのだ。

一方で、理不尽に耐えた苦労の先にある「一杯のビールの旨さ」といった、この世でしか得られない“ささやかな喜び”を、彼は知らないまま去ってしまった。饒舌でも説教でもない水谷くんのこぼれ落ちるような言葉は、仕事に疲弊した読者の心の奥へじわじわと染み込み、「ビールより先に、言葉が沁みた」と多くの反響を集めた。

■郵便局員は「会社の顔」が脱げない

作者であり、自身も現役郵便局員である送達ねこさんによると、作中の描写は彼自身の現実と地続きだという。仕事終わりのノーガードな私生活の時間でも、道や店で不意に客から会釈されることがある。「今、お行儀は悪くなかったか?」ととっさに自分を振り返る緊張感は、不特定多数と接する接客・サービス業の宿命だ。

人生に、とどまる意味はあったのか?その問いに完全な答案はないが、それでも踏ん張って生きる大人たちの姿を描く『郵便屋が集めた奇談』。日本のどこかでひっそり起こる怪異に耳を澄ませると、背筋のゾクッと感と同時に、不思議と心が温かくなるはずだ。

取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)

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配信元: Walkerplus

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