シャンパンと括約筋|佐藤友美

シャンパンと括約筋|佐藤友美

人生最大の敗北感

決定打はそのさらに数週間後のことだった。
舞台は、三重県桑名市にうつる。

この日、私は、桑名で久しぶりのリアル講演が入っていた。せっかくだから、小学4年生(当時)になる息子も連れて、週末プチ旅行をしようと思っていた。

そこで、前から行きたいと思っていた室内アスレチックジムを予約した。そこで、息子がずっとやりたいと言っていたボルダリングに初挑戦した。

あー、仕事ついでに地方に連れていって、新鮮なはまぐり食べさせてあげて、シングルマザーだけど頑張って働いて、こんなアクティビティまで楽しませてあげている私、なんていい母親、ってちょっと悦に入っていました。うん。

で、私の人生、だいたいそうなんだけど、こうやって調子にのっているときに、天罰がくだるようになっている。
その天罰は、かなり唐突にやってきた。

「ママ、これもやってみたい!」
と、息子が言ったのはトランポリン。

私、小学生の時にちょっとだけ、トランポリンクラブに所属していたことがある。ほんの少しだけど、くり出せる技もある。
ここで、サクッと技を決めたら、息子、私のことを尊敬しちゃったりして。そんなことを思いながら、
「おうおう、いいじゃないの、トランポリン。意外と楽しいよ」
なんて言いながら、そのブースに入ったのですが。

3回ジャンプする間に、異変は起きた。

あ、れ、……。
なんか……、あったかいものが……流れた……?

いやほんと、こんなこと書きたくないし、書くキャラじゃない感じで生きてきたつもりなんだけど、

私の括約筋……
トランポリンの3回のジャンプに耐えられなかった。

嘘だろ。
マジかよ。

別にね、ダバダバ飲んだくれてジャンプしたわけじゃないんだよ。
完全に素面(しらふ)だよ。
ていうか、朝の10時半だよ。

神様。
私、どうして。
三重県桑名市のショッピングモールにある室内アスレチックのトランポリンにて……

尿漏れしているんでしょうか。

先輩の話を人ごとのように聞き流してしまった天罰だと思った。
でもまあ、ショッピングモールでよかった。トイレ行くフリして、ダッシュして、パンツ買えたから。
人生で一番敗北感あったパンツ購入であったことよ。若かりし頃、うっかりワンナイトしちゃったときのアレとは全然違うよね。もうほんと、この日だけで、何歳も歳をとった気がしたよ。

というわけで、私も、もっとちゃんと人生に向き合おうと思いました。
いやもっとはっきり言うと、加齢に対して、ちゃんと目を見開こうと思いました。

私が大好きで尊敬する美しい先輩たちが、いま立ち向かっている山に、だよ。

私は、ちょっとだけ早めに情報を仕入れて、できることなら心と身体の準備をし、なんらか上手く、そこをね、やり過ごせないかなあって思って書いていきます。

さとゆみと申します。

そんなこんなで、50歳の誕生日の今日、「50代を迎え討つ」という連載をスタートすることになりました。
人生の先輩たちや、いろいろ迎え討つにあたって頼もしい有識者の方々のお話なぞ伺いながら、女の人生について考えていけたらと思っています。
これからも、読んでくださったら嬉しいです。

次回は、「インターポールとVIO脱毛」です。

またね。

配信元: 幻冬舎plus

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