
アパレル業界に約10年身を置いてきた経験をもとに、現場のリアルを描き続けているゆき蔵さん(@yuki_zo_08)。今回紹介するのは、繁忙期の売り場で起きた“たった一度のラッピングミス”が、大きな波紋を呼んだエピソードだ。先輩社員の退職によって人手不足に陥った店舗では、急きょ派遣スタッフを迎えることになった。しかし、その判断が思わぬ緊張を生むことになる——。
■繁忙期の現場に放り込まれた“未経験”という爆弾



12月の繁忙期、人事は派遣スタッフの確保に奔走していた。ただでさえ人が集まりにくい時期に、期間は3カ月限定。店舗側は即戦力を強く望んでいたが、やって来た派遣社員・鈴木さんは接客業未経験だった。経験不足と若さが重なり、売り場では次々と想定外の出来事が起こり始める。繁忙期の緊張感に、さらに不安が積み重なっていった。
■積み重なる違和感、そして決定的な一線
試着中の客に「パッツパツですね」と率直すぎる感想を投げかけ、売り場のBGMを客層に合わないヒップホップへ勝手に変更する。どれも冗談では済まされない行動だったが、まだ序章に過ぎなかった。現場が凍り付いたのは、プレゼント用ラッピングを任されたときである。「ラッピングお待たせしましたー」と差し出された包みを見た客は言葉を失った。リボンは、贈り物としては避けるべき縦結びだったのだ——。
■怒号にも全然めげない“鋼のメンタル”
「プレゼントなのに縦結びなんて…ありえないですよね?」という客の言葉にも、鈴木さんはきょとんとしたまま。慌てて店長が対応を交代し、その後、鈴木さんはバックヤードで激しく叱責されることになる。ゆき蔵さんは当時を振り返り、「即戦力が欲しくて派遣を頼んだのに、この状況では意味がない。店長が人事に怒るのも当然でした」と現場の空気を語る。
鈴木さんについては、「未経験というより、とにかく自由すぎる性格でした。お願いだから、やらかさないでほしいと思っていましたが、逆鱗に触れるのは時間の問題でした」と当時の心境を明かす。リボンの縦結びについても、「慣れていない人がやると縦結びになりがちですが、見た目的にも不格好で、よい印象を持つ人はいないはずです」と断じる。
地鳴りが聞こえてきそうなほどの店長の怒りにさらされながらも、鈴木さんは平然としていた。「『仕事なめてんの?』と詰められても『なめてませ~ん』と返せる鋼のメンタル。毎回心をすり減らしていた私からすると、ある意味うらやましくもありました」。緊迫した現場の中で、その温度差はあまりにも大きかった。
■華やかな業界の裏で起きていること
ゆき蔵さんのブログ「ゆき蔵さんぽ。」では、「女社会の知られざる闇。」をはじめ、実話をベースにしたエピソードを多数発信している。華やかなイメージの裏で渦巻く感情や人間関係を、淡々と、しかし鋭く切り取ってきた。本作もまた、現場で働く人たちの緊張と葛藤を生々しく映し出している。
取材協力:ゆき蔵(@yuki_zo_08)
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

