白板症(はくばんしょう)という病気はあまり聞き慣れないかも知れませんが、口腔がんとも関係が深いので注意が必要です。
白板症は口腔内の粘膜が部分的に白くなる病気で、舌のがん・口腔がんの前がん病変になることがあります。
前がん病変とは今の段階ではがんの診断を確定することはできないものの、がんになる可能性が高い状態で警戒が必要です。つまり、白板症に気づくことでがんの早期発見・早期治療につながります。
ここでは白板症がどのような病気なのか、注意点などを詳しく解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「白板症」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
白板症で気を付けること

白板症はどのような人に起こりやすいですか?
今のところ分かっているのは、男性の発症率が女性の2倍近く高いことです。病変が現れる年齢は若ければ20代、高年齢では80代の患者さんもいらっしゃるので、年代の偏りはそこまでありません。データから分かるのは、50~60代が比較的多いことです。既にお伝えしていますが、発症原因の1つに喫煙習慣が指摘されています。煙草を日常的に吸っている中高年の男性は白板症に警戒しておいた方が良いかも知れません。
自然治癒の可能性はありますか?
自然に治ることもあります。ただし、医療機関の治療を受けずに自然治癒する確率は低く放置するのは非常にリスキーです。白板症になってから治療を受けずにいる方は、一定の割合でがんになってしまっています。治療を受けても再発する可能性は0ではありません。治療後しばらくの間何も症状が出ないまま経過し、初診から15年後にがん化したケースもありました。
白板症の予防に最も良い手段は?
現時点では喫煙が発症原因になる確率が高いことがわかっているため、喫煙者は禁煙が最良の予防手段になるでしょう。他には飲酒にも気をつけなくてはいけません。お酒の飲み過ぎを自覚している方なら禁酒や節酒することが病気の予防につながります。義歯や入れ歯、詰め物が合わないときも口腔内の刺激になって発症原因になり得るので、定期的に歯医者さんに通い歯の適切な治療を受けることも大切です。
日常生活で気を付けることは何かありますか。
ご自身のお口の中の様子に無頓着にならないよう、気を付けましょう。毎日歯を磨いている方でも、歯や舌の様子を毎日観察している方はそう多くありません。そもそも、普段見えにくい舌の裏側などは鏡などを使ってじっくり見てみないと、健康な状態がどのような感じなのか分からないこともあるのではないでしょうか。白板症の他にもお口の中の病気は色々あります。どんな病気に狙われても早期発見、早期治療ができるよう、口腔内をチェックする習慣をつけるのが理想的です。定期的に歯科検診を受けましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
「口の中がおかしいな」と感じたら積極的に医療機関を頼って下さい。最初は一般的な歯医者さんで大丈夫です。診察の結果、白板症の可能性がある場合は、歯科口腔外科や口腔外科など専門機関の紹介状を書いてくれるでしょう。精密検査を受け、病名を明らかにすることが大切です。何の病気か分かれば対処法も見えてきます。外科手術で病変そのものを切除することも可能です。日本人はがんになりやすく、がんは全身のどこに出現してもおかしくありません。口の中も例外ではないので、口腔がんの発症リスクを下げるためにも白板症に備えることはとても効果的です。
編集部まとめ

舌やお口の中が部分的に白くなっていても、白板症のことを知らなければ「ただの汚れかな」と見過ごしてしまいそうです。
がんについてはもちろん、がんと関係のある他の病気のことを知ることも重要ながん対策の1つだということがよく分かりました。
歯科検診は虫歯や歯周病をチェックするだけではなく、お口の中の病気を早期発見するためにも役立ちます。健康で長生きするために、歯科検診を定期的に受けるようにしましょう。
参考文献
口腔粘膜疾患(口腔外科相談室)
口の粘膜が痛い・ヒリヒリする(口腔外科相談室)

