「自分を好きにならなくてもいい」Adoがクローゼットの中から見つけた“居場所”と光

「自分を好きにならなくてもいい」Adoがクローゼットの中から見つけた“居場所”と光

Adoにインタビューを実施した
Adoにインタビューを実施した / ※提供画像

21世紀の音楽シーンを席巻し続ける歌い手・Adoが、自身の半生を綴った初の自伝的小説『ビバリウム Adoと私』(KADOKAWA)を刊行。幼少期から、社会現象となった「うっせぇわ」でのデビュー、そして今年7月には日産スタジアム公演を控える現在の心境まで――。ベールに包まれていた彼女の“素顔”を、等身大の言葉で語ってくれた。

■「これは私そのもの」濃密すぎる半生を綴った一冊

――初の自伝的小説『ビバリウム Adoと私』がついに発売されます。どのような内容になっていますか?

私の人生を濃密に書いていただいた小説となっています。幼少期や「うっせぇわ」でデビューするに至るまでの道のり、ライブの裏側…。不登校時代の自分や家族のことなど、今まで語ってこなかった部分も大きく書いていただきました。

――発売を控えた今、率直な心境はいかがですか?

いよいよ発売されるんだと思うと、ちょっと緊張もしますね(笑)。今のファンの方はもちろん、「うっせぇわ」のイメージがある方、いろんな方が手にした時にどんな反応をされるのかなと。今までお話しするタイミングが難しかったこともたくさん詰め込めたので、知っていただける機会をいただけて嬉しいです。

――タイトルの「ビバリウム」という言葉には、どんな思いを込めたのでしょうか。

本来は生き物が過ごしやすいように環境を再現した「箱庭」のような意味なのですが、私がずっとこもって歌ってきたクローゼットや子ども部屋にすごく重なると思って。大好きなボーカロイドや歌い手、ニコニコ動画に囲まれて過ごしたあの空間を客観的に見た時、「私はビバリウムに閉じこもっていたんだな」と感じて。このタイトルがぴったりだと思いました。

――本書は作家・小松成美氏による執筆ですが、他者の視点が入ることで新たな発見はありましたか?

小松さんだけでなく、所属事務所の千木良社長や、私の両親…特に母から見た「娘としての私」という視点が入っているのが大きかったです。完成したものを読んだとき、「あぁ、私って周りからはこう見えていたんだ」という発見や嬉しさがありました。いろんな角度から自分と向き合う、すごく貴重な瞬間でした。

■新曲「ビバリウム」は、私から私への語りかけ

――小説に続き、自ら作詞作曲を手がけた新曲「ビバリウム」についても教えてください。

自身で作詞作曲するのは2曲目になりますが、今回は今の私が完全に一から書き下ろした楽曲です。「私自身に語りかけるような、私自身のことを書いた曲」です。刹那的なロックサウンドに仕上がっています。

――前作の「初夏」と比べて、手応えはいかがですか?

「初夏」は16~17歳の頃に書いた曲をベースにしていましたが、今回は今の私が「書きたい、歌いたい」と思う最善を尽くしました。小説と重ね合わせつつ、また違うテイストを楽しんでもらえるかなと思います。

■理想の大人像と、社会への恐怖

――学生時代は「早く大人になりたい」と願っていたそうですが、当時描いていた理想の大人には近づけていますか?

当時は、自立していて何でもこなせて、自分の足で颯爽と歩いている姿が「大人」だと思っていました。誰にも頼らず「できる自分」になりたかった。23歳になった今は、半分くらいは近づけたかな(笑)。紆余曲折ありながらも、いろんな面で自立はしてこられたかなと思います。

――10代の頃は、社会に出ることに対して不安もあったのでしょうか。

憧れもありましたが、半分は恐ろしかったです。社会に飲まれて、働くことだけが目的になって自分を見失ってしまうんじゃないかって。「かっこいい大人」になりたいけれど、すべてが大人になりたいわけじゃない…そんな矛盾した、難しい考え方をしていました。

■夢の叶え方に年齢は関係ない

――「夢の叶え方」について、Adoさんが届けられるアドバイスはありますか?

私は周りの子よりも「夢見がち」なタイプだったと思います。でも、ただ願っているだけ、信じているだけじゃ何も動かないんだと経験を通して学びました。苦しくても、とにかく進むこと。信じているなら、それを行動や言霊にすること。そうすることで、夢は掴みやすくなると思っています。

――「決断に年齢は関係ない」という言葉も印象的です。

そう思います。誰かの決断や願いそのものに、年齢の制限はありません。どの世代の方であっても、自分を信じて行動してほしいなと思います。

――自分を好きになれないまま日々を過ごしている読者へ、Adoさんから伝えたいことはありますか?

正直、みんながみんな、自己肯定感を上げたり自分を好きになったりしなくてもいいと思う部分もあって。最近は「自分を好きでいることが大切」という風潮もありますが、好きになれないからダメなんてことは絶対にないです。

――「好き」になれなくても、それでいいと。

はい。「好き」とは違っても、ただその時間を「受け入れる」だけで十分で。自分のことが嫌いだな、好きになりたいな……そうやって自分の心に気づけていること自体が、ある種の“自愛”というか、自分をちゃんと見つめている証拠なのかなと思います。無理に変わるのが正解だとは思わないので、ありのままの自分でいい。もし「変わりたい」と思う人がいれば、私はそれを全力で支えたいなと思っています。

■Adoの意外なルーティーン

――楽曲制作などで疲れた時、自分を元気にする方法はありますか?

最近、すごくふかふかなイスを買って、疲れた日はそこに「うわーっ」て座って(笑)、恋愛ドキュメンタリーやドラマを見ながら、時間を気にせずゲームをする。そうやってリラックスすると、結構回復しますね。

――普段、新しい才能(新人歌い手やボカロ曲)を紹介されていますが、それも趣味の一環ですか?

そうですね、単純に一リスナーとして新しい出会いを楽しんでいる部分が大きいです。でも、もっと光が当たってほしい才能を見つけると、勝手に感動して「見てほしい!」って紹介してしまいます(笑)。私をきっかけに、ボーカロイドや歌い手の文化、二次創作の文化がもっと広がる一助になれば嬉しいなと思っています。

■「ビバリウム」の中にいる“誰か”へメッセージ

――「Ado」という名前は狂言の脇役を意味する「アド」に由来していますが、世界的なスターとなった今、そのスタンスに変化はありましたか?

心境の変化はありません。むしろ、ワールドツアーを通して「もっと誰かの人生の脇役でありたい」という思いは強くなりました。

――世界を回る中で、そう感じたきっかけがあったのでしょうか?

ステージに立っている時、日本だけでなく世界中の皆さんと感動を分かち合えたことで、改めて強く思いました。私の歌や活動が、リスナーの皆さんの人生を幸せな方向に導いたり、支えたりするものであってほしい。私の歌を知っている人も知らない人も、誰かの人生の“脇役”として力になれたらいいな…。これからもそのスタンスを貫いていきたいです。

――7月には初の日産スタジアム公演も控えています。ファンへのメッセージをお願いします。

大きな会場でまた皆さんに会えることが本当に楽しみです。小説や楽曲を通して、私の新しい発見や「新事実」があるかもしれませんが、私は私のままで進んでいきます。何かが変わるわけではないので、その背中を温かく見守っていただけたら。

――最後に、今どこかの「ビバリウム(閉じこもった世界)」にいる人へ、言葉を届けるとしたら?

無理をして外に出てくる必要はないと思います。本当に怖いものがあるなら、立ち向かう勇気がなくてもいい。私もそうでした。

でも…もし自分の中に「変わりたい」「ここから出たい」という小さな光や、扉を開けたい気持ちが1ミリでもあるなら、その気持ちだけは押さえ込まないでほしいです。たまにでいいので、その心の声と向き合ってみてください。そうすれば、ビバリウムの中から見える景色も、少しずつ変わっていくんじゃないかなと思います。

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