桃山時代の障壁画の特徴
『洛中洛外圖上杉本陶版』に描かれた「花の御所」, Public domain, via Wikimedia Commons.
桃山文化の障壁画の特徴は、豪壮かつ華麗であることです。
背景には金箔・金泥を多用し、薄暗い城の部屋でも絵を明るく輝かせました。主題は大胆でダイナミックなものが多く、巨大な樹木や動物などが好まれています。一方で、四季折々の花鳥風月など、優美な表現も多く見られます。
これらの障壁画の制作を主に担ったのは、狩野派という巨大な絵師集団です。代々幕府や権力者に仕え、大規模な障壁画の注文をこなし、統一された画風を確立しました。この組織力こそが、桃山時代に障壁画の代表作を多く生み出す原動力になったといえます。
障壁画の歴史を築いた代表的な絵師と作品
障壁画には、国宝や国の重要文化財に指定されているものも数多くあります。以下に、代表的な作家と作品名を取り上げます。
狩野永徳
上杉本洛中洛外図屏風(左隻), Public domain, via Wikimedia Commons.
狩野永徳は、桃山時代において障壁画の様式を確立した絵師です。力強い筆致と雄大な構図が特徴で、織田信長や豊臣秀吉に起用されました。
代表作には、皇居三の丸尚蔵館の《唐獅子図屏風》、東京国立博物館の《檜図屏風》、米沢市上杉博物館の《上杉本洛中洛外図屏風》などがあり、いずれも国宝の指定を受けています。
長谷川等伯
長谷川等伯《松に秋草図》1592年頃、16世紀、桃山時代、智積院、京都, Public domain, via Wikimedia Commons.
狩野派のライバルとして登場したのが、長谷川派を率いた長谷川等伯です。等伯は豪壮な永徳様式に対し、より静謐な要素を取り入れた、繊細な表現で対抗しました。
代表作には、水墨画の傑作といわれる《松林図屏風》などが挙げられます。また、京都の智積院を飾る《松に秋草図》《楓図》は絢爛ながらも深みのある色彩が特徴で、等伯の息子である久蔵が制作した《桜図》とともに、寺の宝物とされています。
狩野山楽
伝狩野山楽筆 粟に小禽図屏風, Public domain, via Wikimedia Commons.
桃山時代末期から江戸時代初期にかけては、狩野永徳の画風を継承した狩野山楽が活躍し、桃山文化に栄えた障壁画を江戸の世に引き継ぎました。京都に拠点を構え、「京狩野」の祖としても知られます。
主な作品は、京都の旧嵯峨御所 大覚寺を飾る《牡丹図》や《紅白梅図》などが現存しており、いずれも重要文化財の指定を受けています。
円山応挙
紙本墨画 遊虎図 応挙筆, Public domain, via Wikimedia Commons.
江戸時代中期には円山応挙が登場し、写実的な表現を取り入れた新しい障壁画の潮流を創出しました。三井記念美術館の《松雪図屏風》や金刀比羅神社の《遊虎図》のように、いきいきとした動植物の表現が印象的です。
