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国内患者数約3万人「重症筋無力症」治療の新時代―新薬登場で個別化治療進展にも期待

国内患者数約3万人「重症筋無力症」治療の新時代―新薬登場で個別化治療進展にも期待

Johnson & Johnson(ヤンセンファーマ株式会社)は、全身型重症筋無力症治療薬「アイマービー(一般名:ニポカリマブ)」の発売に伴う記者説明会を2025年11月12日、東京・日本橋で開催しました。新薬発売を機に、疾患の現状と治療の課題、そして新たな治療選択肢がもたらす可能性について、専門医による講演が行われました。
重症筋無力症は、自己抗体によって筋肉の動きが阻害される難病で、国の特定疾患に指定されています。「重症筋無力症は実は治る疾患ではなく、長期的に寛解を維持することが難しいのが現状です」と、総合花巻病院脳神経内科部長の長根百合子医師は講演で説明しました。約50年前からステロイド治療が普及し死亡例は大幅に減少しましたが、完全に症状がなくなる「寛解」を達成できる患者さんの割合は、1940年代から2000年代までほとんど変わっていないという現実があります。
本稿では、長根医師の講演をもとに、重症筋無力症がどのような病気なのか、なぜ治療が難しいのか、そして新薬がどのような仕組みで働くのかを解説します。

長根 百合子

監修医師:
長根 百合子(総合花巻病院)

総合花巻病院 脳神経内科 部長。1994年岩手医科大学医学部卒業。同大学神経内科勤務を経て、2006年より総合花巻病院に勤務。日本神経学会専門医・指導医、日本神経治療学会評議員、日本神経免疫学会評議員。重症筋無力症診療ガイドライン作成委員会研究協力者、Japan MG Registry study group事務局を務め、全国筋無力症友の会顧問としても患者支援に尽力している。

重症筋無力症とは

自己抗体が筋肉への信号を阻害する病気

重症筋無力症は、英語で「Myasthenia Gravis(マイアステニア・グラビス)」といい、頭文字をとって「MG」と呼ばれます。この病気は、両端が骨に付着し、自分の意思で動かすことができる骨格筋の「神経筋接合部」という場所に問題が起きる自己免疫疾患です。神経筋接合部とは、運動神経の末端と筋肉の接触部分で、脳からの「動け」という命令を筋肉に伝えます。このとき神経筋接合部では、神経伝達物質「アセチルコリン」が放出され、筋肉側の「アセチルコリン受容体」がこれを受け取ることで筋肉が収縮します。

重症筋無力症の患者さんの約8割では、アセチルコリン受容体に対する「自己抗体」が作られています。抗体は本来、細菌やウイルスなど外敵を攻撃するものですが、自己抗体は誤って自分自身の組織を攻撃してしまいます。この自己抗体が神経筋接合部の信号伝達を阻害することで、筋肉がうまく動かなくなるのです。

国内患者数は約3万人、65歳以上の発症が増加

国内では患者数が増加傾向にあります。2006年の全国調査では1万5100人でしたが、2017年には2万9210人とほぼ倍増しました。人口10万人あたりの有病率も、11.8人から23.1人へと増えています。「この背景には診断の向上や、高齢化などが影響していると考えられています」と長根医師は説明します。男女比は1対1.7(2006年)で女性にやや多く、発症年齢は乳幼児から高齢者まであらゆる世代に及びます。特に近年は65歳以上で発症する「高齢発症」の患者さんが増えているのが特徴です。なお、遺伝することはまれとされています。

重症筋無力症の症状

まぶたが下がる、物が二重に見える「眼筋症状」

重症筋無力症では、全身の骨格筋が影響を受けるため、さまざまな症状が現れます。特に頻度が高いのが、まぶたを上げる筋肉が障害される「眼瞼下垂(がんけんかすい)」と、眼球を動かす筋肉が障害されることで物が二重に見える「複視」です。これらは「眼筋症状」と呼ばれ、多くの患者さんがこの症状から発症します。

生涯を通じて眼筋症状だけにとどまるタイプは「眼筋型MG」と分類されます。一方、全身に症状が広がるタイプは「全身型MG」と呼ばれ、舌や顔、喉の麻痺による症状も現れます。具体的には、長く話していると呂律が回りにくくなる、うまく飲み込めない、硬いものをかむとあごが疲れやすいといった症状です。

反復運動で悪化、夕方に症状が重くなる特徴

「MGは反復運動で悪化し、安静で軽快するという特徴があります」と長根医師は説明します。ドライヤーや歯磨きといった繰り返しの動作で脱力が誘発される「易疲労性」や、朝は比較的調子が良くても夕方にかけて症状が悪化する「日内変動」も特徴的です。さらに重度になると、手足に明らかな筋力低下が出たり、重度の嚥下障害(えんげしょうがい)が現れたりします。最も重い状態は「クリーゼ」と呼ばれ、自力で呼吸できなくなり人工呼吸器管理が必要となることもあります。ただし、「最近は早期診断、適切な治療により、クリーゼまで至る重症例はかなり減ってきています」と長根医師は述べました。

配信元: Medical DOC

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