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国内患者数約3万人「重症筋無力症」治療の新時代―新薬登場で個別化治療進展にも期待

国内患者数約3万人「重症筋無力症」治療の新時代―新薬登場で個別化治療進展にも期待

従来治療の問題点と患者さんの負担

ステロイド治療で死亡例は減少、しかし寛解率は変わらず

重症筋無力症の治療は、約50年前から大きく変わりました。1970年頃に高用量経口ステロイド療法が普及し、死亡例は劇的に減少しました。「1940年代は死亡例が約30%もいて、本当に大変な疾患だったのですが、高用量経口ステロイド療法の普及により、死亡例は大きく減りました」と長根医師は解説します。

ただし、高用量のステロイドをいきなり投与すると、初期増悪からクリーゼに至る場合があるため、少量から徐々に増やしたあと高用量で維持し、ゆっくり減量するという治療スタイルがとられていました。改善に要する期間が極めて長く、患者さんは長期の入院を強いられる場合があったといいます。また、減量中に症状が再び悪化して減量を中断し、患者さんによっては数年、数十年もの間、中等量以上のステロイドが投与され続けることも少なくなかったそうです。中等量以上のステロイド投与を年単位で続けると、満月様顔貌、肥満、糖尿病、骨粗鬆症、不眠、抑うつといった患者さんの生活の質に大きく影響する副作用が発生する可能性があります。

ここで重要な事実があります。症状が改善する患者さんは増えましたが、完全に症状がなくなる「寛解」を達成できる患者さんの割合は、1940年代から2000年代までほとんど変化していないのです。長根医師らが継続している全国調査によると、日常生活に支障のない改善レベル以上を達成している患者さんは2010年の49.5%から2021年には約58.0%まで増加しています。一方で、「完全寛解」と「薬理学的寛解」を合わせた「寛解」を達成した患者さんは2010年の調査でも2021年の調査でも10%台にとどまっていました。また、21.1%が複数の免疫治療薬による治療や血漿浄化療法、免疫グロブリン静注療法などを一定期間行っても十分な改善が得られない「難治例」に該当することが分かりました。

症状の変動が「怠けている」と誤解される

「MGの症状というのがなかなか周囲に理解されず、ある日は元気なのに急に寝込んでしまうこともあり、そういった症状の変動が怠けているとか、サボっていると誤解されているような現状があります」と長根医師は説明します。医療従事者からも誤解を受けることがあり、精神的な問題ではないかと診断されたり、そのように扱われたりする場合もあるといいます。

日本国内で行われた調査では、職を有していた680例のうち、185例(27.2%)が失職を経験していました。また、244例(35.9%)が収入減少を経験し、うち115例は50%以上の減収だったという深刻な結果も報告されています。「いつ悪化するか分からないという不安から、計画を立てて生活することが難しい」という声もあります。

アイマービーの特徴

FcRn阻害薬という新しいアプローチ

こうした課題に対し、近年は分子標的薬の開発が盛んになっています。今回発売されたアイマービーは「FcRn阻害薬」という種類の薬です。

「FcRn」とは「新生児型Fc受容体」の略で、血中を循環するIgG(免疫グロブリンG)の「リサイクル」に関わっています。通常、血中から細胞内に取り込まれたIgGがFcRnに結合すると、再び血中に戻されてリサイクルされます。一方、FcRnに結合できなかったIgGはリソソーム(細胞内でさまざまな生体分子の分解を担う小器官)で分解されます。FcRn阻害薬はこのリサイクルを妨げることで、重症筋無力症の原因となる病原性自己抗体(IgGの一種)を減少させます。

「簡単に言うと、注射によってIgGを減少させることができる薬剤になります。血漿浄化療法(人工透析のように血液を体外に取り出し専用の装置で自己抗体を取り除く治療)もIgGを減少させますので、『注射でできる血漿浄化療法』と表現されることもあります」と長根医師は説明します。

2週間隔の継続投与で安定した症状管理を目指す

これまでのFcRn阻害薬は、症状が悪化したタイミングで一定回数投与し、症状が良くなってまた悪化したら次のサイクルを行う、という「サイクル治療」でした。アイマービーは投与方法が異なり、初回は体重あたり30mgを投与し、以後は2週間隔で体重あたり15mgを継続して点滴静注します。「FcRn阻害薬による維持療法を継続することによって、より安定した症状管理が行われることが期待されます」と長根医師は述べています。

配信元: Medical DOC

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