誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
渋谷の夜は、祈りの残響でできているとして
交差する光は失われた誰かを想い瞬き、人流は無言の行進を続けてゆく
耳の奥で鳴る音像は、救済という言葉を解体して、柔らかな震えだけを残して
彼が施す低音は心臓の裏側を撫であげ、旋律は高まる感情を引きずり出そうと、君と僕の歩んだ道筋を滲ませたまま
スクランブルのサイネージは、疲れた天使の羽根のように色褪せて、春の風はビルの隙間でため息をついたまま君を離さない
誰もが小さな夜を抱え怯えて、昨夜の傷をポケットに忍ばせているが、救いは一向に天からは降りてこない
ただ、胸の奥でかすかに灯る微熱として存在する君の呟きは、大げさな奇跡を拒み、代わりに静かな余白を差し出す
真夜中に、君と僕はそれぞれの孤独を書き綴る
坂道は現実を傾け、ガラスに映る顔は別人のようにあどけない
名前も過去も、光の中で溶けて、世界が加速度を上げて狂ってゆくのだとしたら、それは美しさを恋しがるがゆえの過剰な感受性
肥大するナルシシズムが、この街を透過してゆく
救いとは、劇的な変化ではなく、涙をこぼさずにいられる一瞬のこと
その震えが消えない限り、関係は終わらない
傷ついた繊細な人だけを、街の何処かでそっと抱きしめてゆくだけ、君と僕の約束が導くままに

Rol3ert『savior』(2026年、Exciter Records)

