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呑みの場に誘われない理由を、優しさのせいにする|私オム

呑みの場に誘われない理由を、優しさのせいにする|私オム

最近、誰にも呑みに誘われなくなった。

2026年に呑みに誘われたのは新年会などの特別な会を除けば0回である。

いま「0」という文字を打って改めて自分の出不精さを実感する。あ、いや、私が出不精だから「0」ではないのか。誘われないから「0」なのか。

悲しいというより、呑みの場に必要とされていなさすぎて笑ける。

どうしてこんなにも誘われなくなってしまったのだろう。昔はもう少し誘われていた。2ヶ月の間も「0」ということはなかった。

誘われない理由を考えてみた。すぐに帰るとかやんわり断るという私の性格からくる理由は除外するので、こういう理由であってほしいという願望になる。

 

まず、犬を飼い始めたからかもしれない。

演劇人の呑み会は時間が長い。18時から呑み始めて翌朝の4時や5時まで呑んでいることはざらである。そんなに長い時間もなにを話をしているのかを改めて考えてみたが、思い出せない。はっきりと記憶に残らない、残っていなくても大して問題のない会話をしているのだ。会話の内容よりも共に朝方まで時間を過ごしたということが大切なのだと思う。

とにかく、演劇人との呑み会は日付が変わるまでに帰宅できれば早い方なのだ。

そんなに遅くまで家を離れてしまっては犬に餌をあげられない。餌あげを理由に誘いを断ったことはないが、きっと周りは「あいつは犬に餌をあげなきゃいけないからな」と気にしてくれているはずだ。

周りの人たちの優しさで私は呑みに誘われないのだ。これが誘われないひとつ目の理由。

次に考えられる理由は、いつも飲んでいるメンバーがおじさんになり始めたということだ。よく呑んでいたメンバーは30歳中盤から40歳中盤ぐらいになった。

知り合った20代の頃には毎日のように朝まで呑んでいたが、みんな歳を取り始めてアルコールを体に入れると翌日のパフォーマンスに影響するようになったのだ。老化の始まりを我々は感じている。言い方を変えれば、翌日にやり遂げなければならない仕事をより意識高く取り組むようになったということだ。素晴らしい。

老いと意識の向上によって私は呑み会に誘われなくなったのだ。これがふたつ目の理由。

最後に考えられる理由は、私が結婚をしたということだ。

私を強引に誘うことや遅くまで引き止めることは、私とその人(誘ってくれた人)だけの問題ではなくなる。妻にまで影響を与える。別に今までも強引に誘われたこともないし、妻から呑みに行くなと言われたことは一切ないが、新婚の私を周囲は気遣ってくれているのであろう。多くの人たちの心遣いによって、私は家で妻と犬と円満に過ごせている。

(いつも呑みにいく店のオーナーが昨年上演した「許溶のとき」と書いた一升瓶を打ち上げの時にくれた)

いろいろと自分勝手に、何も私に非がないように書いたが、本当の理由はわかっている。

私が帰りたい空気を出すようになったからだ。どれだけ楽しく呑んでいても、翌日にやらなければならない仕事や妻の顔が頭をよぎったり、犬に会いたくなったりすると無性に帰りたくなるのだ。いや、帰らねばならないと思うようになってしまったのだ。

その場を共に楽しんでいる人たちのことを考えると、とてもよろしくない。変えなければならない私のダメなところだ。

周りの優しさに甘えようとしたり老いのせいにしたり気遣いを理由にしたりしようとする思考に難がある私を、これまでたくさん呑みに誘ってくれた仲間たちのありがたさを改めて感じた。

誘われない理由を周りのせいにして面白おかしく書こうと思ったが、書いているうちに自分の未熟さに気づくことになり、これまでの生き方を反省することになってしまった。

辛い。

呑みに誘われずに、妻の言うことしか聞かない犬を横目にしながら部屋の隅っこでこの記事を書いている。きっと私が家にいなくてもこの家は穏やかなのだろうと思う。

とても呑みに行きたい気分だ。

 

配信元: 幻冬舎plus

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