ウェルニッケ・コルサコフ症候群
ウェルニッケ脳症とその後遺症であるコルサコフ症候群を合わせて、ウェルニッケ・コルサコフ症候群と呼びます。ウェルニッケ脳症はビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こる脳の病気です。脳の奥にある脳幹部にごくわずかな出血が起こり、眼球運動障害や意識障害、運動失調などの症状が急激に出現します。アルコールを過剰摂取するとビタミンB1が大量に消費されることが知られており、ウェルニッケ脳症の原因のうち約半分がアルコール依存症です(4)。発症から間もないうちに適切な治療を行えば回復は可能ですが、治療しないままだと高率でコルサコフ症候群に移行します。コルサコフ症候群では、記銘力障害(新しい物事を覚えられない)や見当識障害、作話などの症状が出現し、一度発症すると回復は困難です。
アルコール性認知症の症状
アルコール性認知症では次のような症状がみられます。ただし、こうした症状のすべてが出現するわけではありません。原因となる障害に応じて出たりでなかったりします。また、アルツハイマー型認知症など、別の認知症疾患を合併している場合は、ここで挙げた以外の症状がみられることもあります。
眼球運動障害
ウェルニッケ脳症でみられる3徴(3つの代表的な症状)の1つです。眼振(眼球がけいれんするような動き)、眼の周りの筋肉の麻痺やこわばり、注視障害(両方の眼を同じように動かせない)などがみられます。
意識障害
意識が混濁したり、錯乱(情報を正しく処理できない状態)、昏睡(目を閉じまま無反応の状態)をきたすことがあります。ウェルニッケ脳症の3徴の1つです。
運動失調
ふらついたり、歩行がぎこちなく、不安定になります。ウェルニッケ脳症の3徴の1つです。
記憶障害
もの忘れが起こります。新しい言葉や物事を記憶できなくなる記銘力障害がみられます。
見当識障害
「今はいつか」「ここはどこか」「この人は誰か」、時間や場所、人がわからなくなります。
作話
実際に経験していないのにあたかも経験したかのような作り話をします。コルサコフ症候群でみられる症状の1つです。
アルコール依存症と同じような症状
意欲の低下や興奮、攻撃的な言動、幻覚、脱抑制(行動に抑制が効かなくなる)など、アルコール依存症と同じような症状がみられることがあります。

