アルコール性認知症の治療
アルコール性認知症の治療は、できる限り早期に、医師の指導のもとで始めなければなりません。大量の飲酒習慣があり、上記の症状がみられた場合は、すぐに医師に相談しましょう。ウェルニッケ脳症の治療では、ビタミンB1を大量に投与します(5)。治療が遅れると高率で回復が困難なコルサコフ症候群に移行するため、少しでも早く治療を開始することが重要です。脳梗塞などの脳血管障害を併発している場合は、高血圧や糖尿病などのリスク因子に対する薬物治療を行います。薬以外の治療としては、まず挙げられるのが断酒です。アルコールの摂取量を大幅に減量する、またはアルコールの摂取を断つことで症状の回復/改善が期待できます。ただしアルコール依存症の場合、断酒により強い離脱症状が出ることもあるため、医療機関を受診して治療を行うことをおすすめします。断酒と並行して、生活スタイルの改善や栄養不足を補う食事療法なども行います。
アルコールと脳、認知症の関係
アルコールと脳の関係については、飲酒量と脳萎縮の間には正の相関があることが知られていて、飲酒量が多いほど脳萎縮の程度も大きくなるとされています(6)。また、1日あたりの飲酒量が20g(例:缶ビール500ml、日本酒1合)を超えますと認知機能低下や認知症発症のリスクが高まると報告されています(7)。一方で、少量の飲酒をする人は、飲酒をしない人、大量に飲酒する人よりも、認知症や認知機能低下の危険性が低いという報告もあります(1)。つまり、アルコールは脳や認知機能に悪い影響を及ぼすこともありますが、節度を守って飲むぶんには認知症の予防につながる可能性があるのです。

