人間は長所も短所もある。個性を認めると楽になる
和田 『ビッグコミック』で今も連載をされていますよね。すごいなあ。
ちば まだやっているんですよ。大したページ数でもないんですけど一応ね。「ちばさんにカラーを4ページあげるよ」って好きに描かせてもらってます。
和田 どれくらいの時間をかけるんですか?
ちば 時間はあんまり考えませんね。なんとなく気が向いたら描くという感じで。
和田 ちば先生の絵って端から端まで細かいですよね。僕は映画を撮るのですが、映画監督も細部を気にしない人と画面の端の小道具まで気にする人がいるんです。それと、ちば先生の絵は視点も面白い。例えば食堂でみんなが並んで食べているのを上からの視点で描いたりする。映画監督みたいだなって思います。
ちば 漫画はみんなそうじゃないですかね。上から俯瞰したり、下からあおったり。私も昔からたくさん映画を見て、ずいぶん勉強になっていますからね。
和田 キャラクターの話は先ほど伺いましたが、やはり体験から来るんでしょうね。
ちば 本当にね、今まで付き合った人、みんなそうですよね。「こいつは気に入らない」とか「なんか難しいやつだなあ」と思っても、よく話してみると、そいつの言っていることは「なるほど、だからそういうふうに思うのか」って、よくわかるんですよね。みんなクセはあるし、そのクセが合わなかったりすることはあるけどね。みんな欠点を持っているし長所も持っている。本当に人間っていうのは面白いなと思いますね。
和田 僕は精神科の医者ですが、患者さんによく話すんです。「相手にはいい面も悪い面もある」ということに気づくと少し人間関係が楽になりますよって。ちば先生のように人を多面的に見られると、人間関係のストレスが減るんじゃないですか。
ちば そうですね。ちょっと話し込むとだいたいわかるんですよね。「あ、この人はこういう性格なんだろうなあ。ちょっと短気だけど、こういうところは長所なんだろうな」って。そういうのが見えてくるので仲よくなれちゃう。
和田 いいですね。
ちば 人との関係で、プレッシャーとかストレスをあんまり感じたことはないです。
和田 夫婦でも、例えば夫が定年退職してずっとふたりきりになると、悪いところばかりを見るようになって、関係が悪化するケースがあります。本当はいいところもたくさんあるはずなんですが。
ちば どんどん悪いふうに回ってしまうのは、悲しいなあ。そうなってしまう人もいるんだろうけど、そうならないほうがお互いの幸せのためにはいいね。
和田 ちば先生はやっぱり優しいですね。そういう柔軟な暮らし方、考え方をしているから長生きできるのだと思います。

