虚実入り混じる情報に翻弄される男の物語を描いた映画『#拡散』では、ワクチン接種の翌朝に妻を亡くした主人公・浅岡信治を演じている。
インタビューでは、撮影秘話や役を表現するうえで意識したこと、さらに仕事との向き合い方に対する最近の変化などを語ってくれた。

■別人のように変貌していく主人公「アップダウンが激しくてあらゆるものを抱えながら生きている人だと捉えて演じていました」
――脚本を読んで出演を即決されたそうですが、本作のどんなところに魅力を感じましたか?
【成田凌】脚本を読んだときに、主人公の浅岡信治の物語は他人ごとではないように感じられて、触られたくないところを触られている感覚になったんです。そこがすごく印象的でした。また、今や誰しもが身近に感じる“拡散”という題材を扱っているので、多くの方に興味を持っていただけるのではないかという予感もありましたね。とにかく港(岳彦)さんの手がけられた脚本がとてもおもしろかったので、即決しました。
――妻を亡くしたあと、別人のように変貌していく浅岡という役をどのように捉えて演じられたのでしょうか?
【成田凌】妻を亡くしたあとの彼は、“生きる気力を失ってしまった人”というか、客観的にそう見えると思うんです。人は“配偶者の死”によってストレス値がものすごく高くなるそうで、きっと浅岡も計り知れないほどのストレスを抱えていたのではないかと。
そんな中で、妻が亡くなったのはワクチン接種をしたからだと思い込み、妻の担当医に対する抗議運動を始めたことで世間から注目を集めて、変なスイッチが入ってしまう。そこからの浅岡の変化を意識しながら演じていました。

――浅岡が注目されるきっかけを作った沢尻エリカさん演じる記者の福島美波から、「あっという間に仕上がりましたね」と浅岡が言われるシーンが印象的でした。
【成田凌】おもしろいセリフですよね。でもその言葉のとおり、浅岡が自身のSNSアカウントを開設して発信し始めた途端に大バズりしてフォロワー数も急増する。そこから彼はものすごいスピードで変わっていってしまうんです。
エナジードリンクを飲んだときに血糖値が急上昇するように、外部から何か刺激を受けたことで一気にポンと自身の中の何かが跳ね上がってしまったというか。それでもストレスがなくなったわけではないので、アップダウンが激しくてあらゆるものを抱えながら生きている人だと捉えて演じていましたね。


――浅岡のビジュアル面の変化に関してはどんなことを意識されましたか?
【成田凌】物語の序盤では、前髪を下ろして目を隠し、帽子を常に被ってあまり顔が見えないようにしていました。少しずつ有名になってきたあたりから、前髪を真ん中分けにして帽子は浅めに被り、服装もこれまでは選びそうになかった色のものを取り入れることで、彼の心境の変化を表現しています。

――派手目な服を着始めたころから勘違いしている人独特の“嫌さ”を浅岡から感じて、絶妙だなと思いました。
【成田凌】安くてちょっと派手目な服というところがいいんですよね。新しい世界に飛び込んだからにはカッコつけたい…だけどこれまでファッションに触れてきた人ではないから、独特のセンスになってしまうというか、「なんかこの人嫌だな」と感じさせる絶妙な塩梅になっています。
脚本を読んでいく中で、どんどん愛せなくなる浅岡の姿が想像できたので、衣装合わせの際に「香ばしさを感じる服がいいです」と衣裳部さんにリクエストして。撮影期間中はカサカサで血色の悪い唇にして、わざと顔をむくませるなんてこともしながらビジュアルを作っていきました。あと、だらしない姿勢で歩くとか。そんな風に微調整しながら演じていましたね。
――浅岡に共感できる部分はありましたか?
【成田凌】本名と顔を出してSNSを始めた結果、急に世間から注目されたらあんな風に変わってしまっても仕方がないんじゃないかな、とは思いました。誰にでも起こりうることだと思うので、共感というか、理解できる部分は少なからずありましたね。

■ネット社会になって「より“信じたいものを信じる”ようになったのではないかなと思います」
――富山県でロケ撮影を行ったそうですが、共演者やスタッフの方々と食事に行く機会はありましたか?
【成田凌】毎日ではありませんが、撮影が早く終わった日は沢尻さんをはじめとした共演者やスタッフの皆さんと一緒に食事に行くことも多かったです。現場では「昨日何食べました?」と誰かに話を振ると、「どこどこに○○がおいしいお店があったよ」と教えてくれるので、お互いに情報交換をしてお店を開拓していました。

――なかでもおいしかった料理を教えていただけますか。
【成田凌】海鮮料理はもちろんですが、撮影監督の宗(賢次郎)さんが見つけた中華料理屋さんが最高でした。そこは地元で有名なお店らしいのですが、どの料理もとってもおいしかったです。
――皆さんと食事をしながら密にコミュニケーションを取って関係性を深めていけるのは、地方ロケのある現場ならではなのかなと思いました。
【成田凌】そうですね。今回あらためて地方ロケのよさを実感しました。撮影期間中ずっと富山に滞在していたので、作品のことだけを考えていられる、すごく贅沢な時間だったなと思います。

――ちなみに現場では沢尻さんとどのような話題で盛り上がっていたのでしょうか?
【成田凌】お芝居の話というよりは、雑談ばかりしていた記憶があります。「どこどこのお店がおいしかったですよ」みたいな感じでごはん屋さんの話をしたり、お互いサウナが好きなので、スーパー銭湯の情報交換をしたりしていました(笑)。
――話は変わりますが、成田さんはどんなセリフ、場面が強く印象に残っていますか?
【成田凌】浅岡の「人は信じたいものを信じる」というセリフが印象に残っています。以前からそうだったのかもしれませんが、ネット社会になってより“信じたいものを信じる”ようになったのではないかなと思います。
広告や誰かの投稿も含めて、自分が見たいものがまず目に飛び込んでくるので、その中から信じたいものだけをチョイスしていく日々というか。本作を観て皆さんがどんなことを感じてくださるのか、感想がすごく楽しみです。

■やりたいことと求められていることの「バランスを取りながら仕事をしていきたい」
――本作では浅岡の妻がYouTuberとして活動していて、浅岡自身も配信者になるシーンがありましたが、成田さんは普段はYouTubeなどの動画はご覧になりますか?
【成田凌】ボディビルの大会を主催している方の動画をよく観ています。ボディビルダーの食事や体のつくり方などを知ることができて、健康面でもすごく勉強になるんです。なので気がつくとその方の動画を観ていますね。
――2025年はドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』『初恋DOGs』、映画『ブラック・ショーマン』『平場の月』、舞台『リア王』など幅広い作品で活躍されました。最近はお仕事との向き合い方に変化はありましたか?
【成田凌】2025年は観てくださる皆さんのことを意識して出演した作品が多かったように思います。“ザ・恋愛ドラマ”の『初恋DOGs』は初めてチャレンジしたジャンルでしたし、出演させていただいた作品のほとんどが“お客さんがどんな反応をしてくれるのか”ということに重きを置いて挑んだものでした。

――視聴者やお客さんを意識するようになったのはなぜでしょうか?
【成田凌】キャリアを積んでいく中で、自分のことだけを考えてやっていてはいけないと思うようになったのがきっかけです。求めてくださる方がいるのであれば数日の現場でも足を運びたいですし、2025年はおかげでたくさんの方々と出会うことができたので、今後はやりたいことと、求められていることのバランスを取りながら仕事をしていきたいと思っています。
――成田さんの今後の活躍がますます楽しみになりました。
【成田凌】ありがとうございます。気持ちはラクに、仕事は丁寧に、体力面ではキツい現場があることも覚悟しながら(笑)、これからも頑張りたいと思います。


取材・文=奥村百恵
◆スタイリスト:カワセ136(アフノーマル)
◆ヘアメイク:高草木剛(VANITÉS)
衣装=ブルゾン(22万円)、シャツ(11万3000円)、トラウザー(参考商品)、シューズ(11万3000円)/エンポリオ アルマーニ:問い合わせ先 03-6274-7070(ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社)
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