Z世代も足を運ぶアングラ演劇とは…4000人を動員する劇団唐組の魅力「貧乏でも、今は唐組でやれるだけやりたい」<BS12スペシャル・ドキュメンタリー>

Z世代も足を運ぶアングラ演劇とは…4000人を動員する劇団唐組の魅力「貧乏でも、今は唐組でやれるだけやりたい」<BS12スペシャル・ドキュメンタリー>

2月28日(土)、劇団唐組を追うドキュメンタリーが放送
2月28日(土)、劇団唐組を追うドキュメンタリーが放送 / ※提供写真

アングラ演劇、あるいはテント芝居というものを知っているだろうか。公園や神社の境内、河川敷などに立てたテント内で上演する演劇だ。このアングラ演劇の中心にいる劇団唐組に、今若者が集っているという。1967年、俳優であり劇作家の唐十郎が始めた「紅テント」での芝居を受け継ぐ唐組は、トラックで全国を巡り、旅公演を打つ。BS12 トゥエルビ(BS222ch※全国無料)では、2月28日(土)夜9時、この唐組に密着したドキュメンタリー「カリスマ亡きあとの僕たちは ~劇団唐組・テント芝居の日々~」を放送する。なぜ今若者たちがテント芝居に魅せられるのか、旅公演とはどういう生活なのか、7カ月に渡る密着でその姿を追う。

■唐十郎とは何者か? 唐が興したアングラ演劇とは?

アングラ演劇とは1967年、新宿・花園神社の境内でのテント芝居をスタートに唐十郎が興した新しい演劇文化だ。唐十郎は公園、河川敷、駐車場など、日常の風景の中に赤色のテント(通称、紅テント)を立て、そこを舞台に変えていった。戯曲には社会への風刺や人間の衝動が描かれ、若者たちは、時代のわだかまりに演劇で挑戦した唐十郎の紅テントに続々と訪れた。

劇作家・演出家・俳優として1960年代に登場した唐十郎は、紅テントによる野外上演で、それまで劇場中心だった演劇の常識を覆した。詩的で過剰な言葉と肉体を前面に出した芝居は、演劇を鑑賞する文学から体験する事件へ変えたとされる。その衝撃は大きく、日本の現代演劇は「唐以前/唐以後」と区分されるほど革命的な人物である。

唐十郎は2024年5月に永眠したが、彼が創設した劇団唐組は、今も座長代行の久保井研、看板役者の稲荷卓央、藤井由紀らベテラン団員たち、唐組の公演に衝撃を受けて門を叩いた若手団員たちによって守られている。
劇団唐組
劇団唐組 / ※提供写真


■4000人の動員、観客にはZ世代の姿も

長年、唐のもとでテント芝居に立ってきた久保井らは、そのアングラ演劇を絶やさぬよう活動を続けているが、番組での密着の中、彼らの志以上に目に止まるのが、若手の団員たちの姿だ。

入団4年目、22歳の岩田陽彦さんは「貧乏でも、今は唐組でやれるだけやりたい」と強い意志を見せ、入団5年目、29歳の西間木美希さんは、「初めて観たときに忘れられなくなっちゃって。残っている」と興奮を語る。入団2年目、26歳の岡村慶人さんは、「全然分からなかったけど、最後泣いちゃって。これだ!と思ったんですよ」と、衝撃を思い出すように伝える。

岡村さんは、もともとは小学校の教員を目指して大学に通っていた青年だ。大学4年生のときに見た唐組の公演に衝撃を受け、唐組への入団を決めたという。「一か月くらい母親にめちゃくちゃ怒られた」というが、決意は変わることなく、今ここにいる。

そして番組で印象的なのが、今の観客層とその人数だ。入場前には行列ができており、年配層だけでなく、若い年齢層の姿も多く見られる。今どきのファッションに身を包んだ女性二人組は番組の取材に対し、「テントでやるのを観るのが初めてで、お客さんのつながり、役者さんのつながり、唐十郎さんとのつながりを感じられたな」と、たった今目撃してきた唐組の公演に興奮を隠せない様子で語る。

■今若者が集う唐組の戯曲、テント芝居の魅力

唐組は一か月以上の稽古を経て、全国を巡る3か月の旅公演を行う。春の旅公演では4000人もの動員を記録したという。先の女子のように、今唐組の公演には多くの若者が集っている。テント芝居のどこに彼らを惹きつける魅力があるのか。番組ではそれが分かる一旦として、「盲導犬」という特異な戯曲を取り上げている。

「盲導犬」は単に視覚障害者と犬の物語ではなく、「見るとは何か?」「導かれるとは何か?」、そして、「人間の孤独と依存」を主題にした唐十郎特有の寓話的な作品だ。1973年に唐十郎が書き下ろした戯曲だが、みごとに現代で取り沙汰される同調圧力の風刺にもなっている。アングラ演劇を興した唐十郎は、時代へのうっぷんに演劇で立ち向かった。そのときの若者に熱狂的に支持された現象が、現代で再現されているのかもしれない。

また、カジュアルな舞台に慣れた演劇層にとって、テント芝居での衝撃も新しいのだろう。戯曲のクライマックスではテントの舞台装置が一瞬にしてなくなり、戯曲の世界が現実の世界とつながる屋台崩しが披露される。屋内の劇場施設では絶対に体験できない、テント芝居だからこその型破りな演出だ。番組では、その決定的瞬間も収められている。
劇団唐組
劇団唐組 / ※提供写真


■旅公演とはどういうものか、生活風景にも密着

そして、気になる旅公演とはいったいどういう生活なのか。番組ではその姿にも密着している。団員はテントと芝居道具、美術をトラックに積み込み、公演地を目指す。宿泊先はホテルではなく、寺の一室や地域の施設を借りることもある。移動しながら芝居を作り、上演し、また次の土地へ向かう。番組で観る生活の模様は、旅一座そのものだ。今の時代に、こうした演劇団がまだ残っていたのかと、驚きの世界でもある。

しかし、一人一人の情熱で支えられている唐組だが、情熱だけで暮らしていける現代ではない。厳しい環境が想像できるシーンも垣間見える。それでもこの人たちは充実しているのだなと、羨ましさも湧いてくる。彼らの生活や公演に密着しながら行われる団員へのインタビューには、そんな思いを感じずにはいられない。

「カリスマ亡きあとの僕たちは ~劇団唐組・テント芝居の日々~」は、稽古場での試行錯誤から旅公演の舞台裏までを記録したドキュメンタリーだ。そこに映される一つの劇団の記録であると同時に、半世紀にわたり受け継がれてきたアングラ演劇の姿でもある。テント芝居を守り続ける唐組の日々は、演劇の原点を改めて感じさせてくれる。

番組は放送後、TVerにて配信される。

◆文=鈴木康道


提供元

プロフィール画像

WEBザテレビジョン

WEBザテレビジョンは芸能ニュース、テレビ番組情報、タレントインタビューほか、最新のエンターテイメント情報をお届けするWEBメディアです。エンタメ取材歴40年以上、ドラマ、バラエティー、映画、音楽、アニメ、アイドルなどジャンルも幅広く深堀していきます。