
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、レーベル「ポーバックス Be comics」の漫画『AandD』(ふゅーじょんぷろだくと刊)より、61話『ようこそ地獄へ』を紹介する。作者の新國みなみさんが、8月25日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、6000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、新國みなみさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
■堕天使となったハニエルの新たな職業は

地獄の住民となったハニエルが窓口で今後について質問すると、生活に必要なことのほかに就職についても案内された。罪人の魂を地獄へ運ぶ仕事を紹介されたハニエルだったが、今までと同じ生活になってしまうため幼稚園で働くことに。
ハニエルが職業体験として幼稚園にやって来たところ、元七大天使のラミエルと再会。懐かしみながら話すうち、ハニエルは残してきた天使たちのことを考えて自分の行動は無責任なのではないかと悩み始めてしまう。気力がなくなってきたハニエルを見たラミエルは、“堕天後鬱”の初期症状かもと心配し始め…。
この堕天したその後を描いた物語を読んだ人たちからは、「地獄感に惹かれちゃう」「思ったより大変なことになってきた」「軽やかなスタートダッシュが…」「みんなの茶目っ気が大好き」など、多くのコメントが寄せられている。
■「にじみ出る個性を楽しんでもらいたいです」作者・新國みなみさんに漫画創作へのこだわりをインタビュー

――今回のエピソードでは、ハニエルが地獄の住人となったようすや、ラミエルとの再会では「堕天後鬱」などについて語られました。こういった設定やキーワードなどは、どのようなところから着想を得ているのでしょうか?
地獄の住人になった時の手続きの様子や福祉の充実具合などは、ルシファーが作り上げてきた悪魔のための世界を表現するために描写しました。天使は神のために、悪魔は自分のために生きていて、かつ悪魔は人間に影響されて堕天することが多いという世界観なので、人間に近い社会を形成していると考えています。「堕天後鬱」については、作中では生きるのが楽しそうな悪魔が多く登場するので、そういった明るい面ばかりではなく地獄に適応できなかった者たちのことも描くことで天使から悪魔になることのデメリットを明示したかったというのがあります。作中でも「悪魔に堕ちるのは良くないこと」という描写はたびたび出てきますし、今回はその「良くないこと」の一例として「堕天後鬱になる可能性」について描きました。基本的にこの世界は「何らかの理由で神につくられた」という前提で人間も天使も存在していて、無意識のうちにそのことが己の存在理由として本人たちの大きな支えとなっています。悪魔はその存在理由を捨てて自分で生き様を決めるというイレギュラーな存在なので、明確に意思が固まっていないと鬱になってしまうというメカニズムです。
――本作では、ハニエルやラミエルをはじめ、登場人物たちの表情の変化や動きが非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
今回はハニエルが悪魔になったことで周囲の悪魔の反応がどのようなものになるのか、そしてハニエル自身は堕天したことをどう感じているのかという部分に力を入れて描いています。ハニエルが堕ちたことを受け入れられないサタナキア、すんなり受け入れてしまうルシファーとベルゼブブ、真面目に業務をこなすネフィリカ、「もう堕天してしまったのだから気にしなくていい」と諭すラミエル、時間の経過とともに正気を取り戻していくハニエル…など、それぞれの立場からそれぞれの性格や考え方が見えるのでそこからにじみ出る個性を楽しんでもらいたいです。
――特に印象に残っている、または気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
ラミエルがネフィリカの家族について語る部分では何度も細かくセリフを調整しました。ラミエルは心の中で「ネフィリカは実の親の元で育つことができればそれが1番良かったはず」という考えがずっと頭の中にあり、ネフィリカの実両親に対して遠慮のようなものを持っています。しかしその気持ちをハニエルに気づかれれば気を遣わせてしまうのであえて淡々と話を進めて事実だけを伝えた結果、怖い話のようになってしまいハニエルを怖がらせてしまいました。ネフィリカの家庭が崩壊した事象に対して「心配」とは言っても失踪やネグレクトに対して個人的感情を言わないラミエルの優しさが見えるシーンで気に入っています。
――ストーリーを考えるうえで気をつけていることや意識していることなどについてお教えください。
この漫画の1番のテーマは天使と悪魔の「友愛」もしくは「形容しがたい関係性」だと思っているのでそこがぶれないように気をつけています。作中で登場した人物の発言や世界観の設定などが後々ストーリーに大きく影響してくることがあるので、過去の出来事やその時の各人物の感情を忘れないように時系列で考えて、数千年にわたる関わりや因縁を踏まえたうえで関係性を描くようにしています。登場人物が多いので忘れないように記憶しておくのがけっこう大変ですね…。
――今後の展望や目標をお教えください。
まだ天使と悪魔の過去の因縁や明かされていない事情がだいぶあるのでドラマチックに描きたいなと考えています。ハニエルの悪魔としての行く末もそうですし、ハニエルに対する天使側の反応もまだはっきりと描写していないのでそこら辺の掘り下げや今後の関係性の変化を描いていきたいです。あとは個人で『AandD』のグッズの販売やLINEスタンプを作ったりしているので新作を出したいとも思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
『AandD』を読んでいただきありがとうございます!ハニエルとサタナキアの天使悪魔コンビの友情部分に注目して読んでいらっしゃる方が多いかと思います。ハニエルが堕天してしまったことにショックを受けたという感想もいただいております。ハニエルのことですので今後の展開でも面白いことをしでかしてくれると思います。なので悪魔ハニエル編も楽しんで読んでいただければ幸いです。

