「良性発作性頭位めまい症」の症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

「良性発作性頭位めまい症」の症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

良性発作性頭位めまい症は、頭の位置を変えたときなどに突然起こる回転性のめまいが特徴で、めまい疾患のなかでも少なくない病気の一つです。主な原因は、内耳にある耳石が三半規管へ入り込むことで、短時間のぐるぐる回る感覚やふらつきが生じます。発作は通常、数秒から1分以内で治まり、聴力障害や神経症状は伴いません。診断は問診や眼振検査、ディックス・ホールパイク法などの頭位変換検査で行われます。治療は主に耳石置換法などのリハビリ体操が中心で、多くは自然治癒も期待できます。日常生活での再発予防も大切です。

参照:『2024年8月 良性発作性頭位めまい症』( 一般社団法人 宇部市医師会)

伊藤 規絵

監修医師:
伊藤 規絵(医師)

旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

良性発作性頭位めまい症の症状と原因

良性発作性頭位めまい症の症状と原因

良性発作性頭位めまい症の症状を教えてください

主な症状は、頭を動かした際に突然ぐるぐる回るような回転性めまいが生じることです。例えば、寝返りをうったときや起き上がる際、急に上を向いたときなどに発作が起こり、多くの場合、めまいはおおむね数秒〜数十秒ほどで治まります。めまいによりフワフワした感覚や、雲の上にいるような浮遊感をおぼえることもあり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また、何度も発作が繰り返されるのが特徴ですが、じっとして頭を動かさなければ症状は自然に軽快する傾向にあります。聴力障害や耳鳴り、頭痛などは通常みられませんので、めまいの症状のみが現れる点が特徴的です。

良性発作性頭位めまい症の原因を教えてください

主な原因は、内耳に存在する耳石(じせき)と呼ばれる炭酸カルシウムからなる結晶状の粒が剥がれ落ち(正常では球形嚢および卵形嚢の中にある)、三半規管(身体の回転や傾きを感じる耳の器官)に入り込むことです。耳石が頭の位置や姿勢の変化に伴って三半規管内を移動すると、リンパ液の流れが乱れ、平衡感覚を保つ神経が過剰に刺激され、めまいが発生します。耳石が剥がれる原因には、加齢による耳石器の変化や頭部外傷、内耳の炎症、運動不足、長時間同じ姿勢を続けることなどが挙げられます。特に高齢の方や骨粗しょう症のある方、女性ではホルモンの変化もリスク要因とされています。このようなさまざまな要因が重なり、発症リスクとされています。

参照:『2024年8月 良性発作性頭位めまい症』( 一般社団法人 宇部市医師会)

良性発作性頭位めまい症の検査と診断

良性発作性頭位めまい症の検査と診断

良性発作性頭位めまい症が疑われるときは何科を受診しますか?

耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。耳鼻咽喉科では、めまいや聴覚障害の有無、耳石の位置の特定など専門的な診断が可能です。めまいはさまざまな原因で生じるため、聴力検査や問診を通じて、ほかの疾患との鑑別も行います。また、めまいが何度も起こる場合や、難聴や耳鳴りなどの症状が伴う場合は適切な治療を受けるためにも早期の受診が重要です。まずは耳鼻咽喉科に相談してください。

良性発作性頭位めまい症の検査を教えてください

まず問診や診察で症状の状況や発作のタイミングを確認します。代表的な検査は眼振検査と呼ばれ、頭の位置を変えることで現れる眼の動き(眼振)を観察します。フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラ(患者さんに特殊なゴーグルを装着して眼振をみる検査)を用いて眼振の有無や向きを調べ、耳石が三半規管へ入り込んだことを確認します。ほかの疾患との鑑別のため、聴力検査や必要に応じて血液検査、CT、MRIなどの画像検査も行います。

良性発作性頭位めまい症の診断基準を教えてください

診断基準は、特徴的な回転性めまいや頭を動かした際に誘発される一過性のめまいを認めることです。問診で症状の内容や発生状況を確認し、眼振(眼の異常運動)検査やディックス・ホールパイク法(Dix-Hallpike maneuver supine roll test:頭を傾けて眼振を誘発する検査)などの頭位変換検査で特徴的な眼振が観察されることが重要な診断点です。画像検査(CT・MRI)で脳梗塞や腫瘍など他疾患が否定されることも診断の補助とされます。聴力障害や耳鳴り、神経症状がない場合、良性発作性頭位めまい症と診断されます。

配信元: Medical DOC

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