良性発作性頭位めまい症の治療法

良性発作性頭位めまい症は治癒する病気ですか?
多くの場合で自然に治癒する病気です。よって、治療が行われなかった場合は外側半規管型では平均9日、後半規管型では平均39日でめまいが消失するといわれています。ただし、症状が長期間続く場合や再発するケースもあるため、場合によっては耳鼻咽喉科でリハビリや専門的治療を受けることが推奨されます。良性発作性頭位めまい症は治癒後に50%が再発し、特に1年以内の再発がよくみられます。
良性発作性頭位めまい症の標準的な治療法を教えてください
標準的な治療法は、頭の位置を変えて三半規管から耳石を元の位置に戻す耳石置換法(エプリー法)です。医師が患者さんの頭を数回動かして誘導し、耳石を症状の出ない部位へ移動させます。特に後半規管型はエプリー法、外側半規管型にはレムペルト法など適した運動療法が施されます。発症直後の激しいめまいの自覚があるときは7%重曹水の静注、制吐薬・抗不安薬、その後は抗めまい薬、抗ヒスタミン薬の投与がなされます。薬物療法は補助的に用いられ、自然治癒を待つケースもあります。
良性発作性頭位めまい症の再発を防ぐ方法はありますか?
再発率を低下させるためには睡眠時の頭位を健側下頭位にすることが有効と示されています。そのためには主治医から患側が右か左かを聞いておくことが必要です。また、生活習慣の見直しや耳石の剥離や迷入を防ぐため日常的な前庭リハビリ・頭位変換運動(Brandt–Daroff体操など)が有効とされています。
寝返り運動や頭を動かす体操を日常的に行うことで、耳石が三半規管に入り込むのを防いだり、耳石が細かく砕かれたりして再発リスクを減らす効果があります。さらに、ビタミンDやカルシウムなど栄養状態の改善、ストレスや睡眠不足の回避も予防に有効です。 定期的な耳鼻咽喉科の受診や相談も再発対策として大切です。
日常生活で気を付けることを教えてください
まず頭を動かす際はゆっくりと行動し、めまいが誘発されやすい動作や姿勢は避けるようにします。起き上がるときはすぐに身体を起こさず、天井を見てから横向きになってゆっくり起きあがります。また、めまい発作時は転倒防止を意識し、安全性の高い場所での安静が大切です。規則正しい生活や十分な睡眠、適度な水分補給も症状の軽減や再発防止に役立ちます。
参照:
『2024年8月 良性発作性頭位めまい症』( 一般社団法人 宇部市医師会)
『良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン』(Equilibrium Res Vol. 68(4) 218~225,2009)
『良性発作性頭位めまい症』(済生会)
編集部まとめ

良性発作性頭位めまい症は、頭の向きや姿勢を変えた際に突然回転性のめまいが起こる疾患で、主に内耳の耳石が三半規管へ入り込むことが原因とされています。症状は短時間で治まるものが多く、命に関わる危険性や後遺症もありませんが、ときに吐き気やふらつきを伴うことがあります。診断は問診や頭位変換検査(ディックス・ホールパイク法)・眼振検査などを通じて行われ、他疾患との鑑別のために画像検査も行われる場合があります。治療は耳石置換法、つまりエプリー法やBBQロール(身体を横向きに回転させ耳石を戻す方法)などの体位リハビリが中心となり、多くの場合自然治癒も期待できます。繰り返す場合は耳鼻咽喉科に相談し、生活習慣の工夫も大切です。
参考文献
『良性発作性頭位めまい症』(済生会)
『2024年8月 良性発作性頭位めまい症』( 一般社団法人 宇部市医師会)
『良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン』(Equilibrium Res Vol. 68(4) 218~225,2009)

