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「その言葉、目の前で言えますか」五輪選手を追い詰めるSNS中傷 元フィギュア選手の弁護士が問う“想像力”

「その言葉、目の前で言えますか」五輪選手を追い詰めるSNS中傷 元フィギュア選手の弁護士が問う“想像力”

●「痛い」「しんどい」選手の大変な姿も本当は見て知ってほしい

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多くの人は、アスリートの「美しい瞬間」だけを見ます。

しかし、選手たちの重ねた練習に思いを馳せてほしいです。よく「血の滲む努力」と言いますが、決して誇張ではありません。選手は実際に血を流しながら練習しています。

フィギュアは常にケガと隣り合わせです。ジャンプでは、着氷する片足に尋常でない負担がかかります。

転べば、アザが何日も消えず、強い痛みが続くことがあります。ジャンプの失敗が骨折や脳しんとうにつながることもあります。視聴者には伝わりにくいかもしれませんが、美しく見える氷は岩のように硬いのです。

私も、新しいジャンプに挑戦する時は、常に失敗やケガの恐怖と闘っていました。

それでも、技術を磨き、限界を超えるためには、何度も挑戦し、何度も転ばなければなりません。痛みやケガの恐怖を乗り越えて、表舞台に立っているのです。

「ただ滑っている」ように見える動作も、体幹、足首や膝を限界まで使う高度な技術です。体への負担は大きく、ケガのリスクも高いです。多くの選手が30代を待たず競技を離れるのは、体の回復が追いつかなくなるからでもあります。

メディアでは良いところを取り上げますし、つらい練習の様子が公開されることは少ないですが、ぜひ、その現実を知って、可能な限り具体的に想像してもらいたいと思います。そうすれば、生身の人間に投げかけるべきでなかった中傷の言葉は変わるはずだと思います。

●「違法かどうか」の前に考えてほしいこと

──加害者には「誹謗中傷をやめよう」というメッセージが届きにくい問題もあります。

誹謗中傷が名誉毀損や侮辱にあたるか、民事上の不法行為になるか、刑事罰の対象になるか──という法的な注意喚起も弁護士として伝えたいところです。

しかし、法的に違法とまで至らない発言であっても、選手に深いダメージを与えることがあります。

たとえば、「日本の課題はアイスダンスだ」という指摘は競技への健全な批判です。

たしかにフィギュアは団体で銀という素晴らしい結果になりましたが、一方で、客観的に見て、アイスダンスは伸び悩んでいます。

アイスダンスを世界トップクラスの実力に伸ばすことは、スケート連盟としても一丸となって取り組まなければいけない課題と理解しているはずです。

しかし、「アイスダンスが足を引っ張ったから金メダルを逃したんだ」という表現はどうでしょうか。実際にこのような書き込みを目にしました。

違法かどうかは微妙であるとしても、これを聞いた選手の心はえぐられるでしょう。

アイスダンスの選手も、日々、身体への負担やケガの恐怖に打ち勝ちながら、スケーティングや技の技術を磨いています。血の滲む努力をしているのです。

今回のオリンピックでも、メダルが遠のくかもしれないという凄まじいプレッシャーがある中で、選手は役割を果たし、銀メダルに貢献しました。私は、敬意の念を禁じ得ません。

こうした血の滲む努力、プレッシャーを想像した時に、「アイスダンスが足を引っ張ったから金メダルを逃したんだ」という表現を、本当にできますか?

法律論を超えて、問い直したいことがあります。

〈その言葉を、選手の目の前で、顔を見て言えますか〉

違法かどうか以上に、その想像力を持ってほしいのです。

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