●プラットフォームの葛藤、メディアの影響
JOCの誹謗中傷対策チームは、AIも駆使して投稿削除を実現したといいます。根本解決ではありませんが、選手を守るための素晴らしい取り組みだと思います。
一方、プラットフォーム事業者は「表現の場」の提供者として、法やルールに違反しない表現やユーザーを守るべき立場でもあります。
削除等の判断は微妙なケースが少なくなく、日々難しい判断に直面しています。AIを駆使して誹謗中傷を抑制する工夫も見られるところですが、プラットフォーム事業者は、誹謗中傷とユーザーや表現保護との間で常に葛藤を抱えています。
メディアの報道はどうでしょうか。
言うまでもなく、選手の活躍に関する報道は必要不可欠です。他方で、フィギュア女子シングル銅メダルの中井亜美選手について、フリーの演技直後の仕草が大きく取り上げられました。ペア金メダルの「りくりゅう」こと三浦璃来選手、木原龍一選手ペアの関係性も大きく取り上げられています。
このように、競技の本質とは直接関係のない話題を強調する記事を量産することが誹謗中傷を助長する土壌につながらないか、私はとても心配しています。
「嫌ならSNSを見なければいい」という声もありますが、選手側がSNSの利用を制限されるいわれはありません。
中井選手は今年1月、公式SNSのアカウントを持たない理由について、アンチのコメントを見て嫌だと思うなら、最初からやらない方がいいと思った、などと説明したそうです。
SNSにおける誹謗中傷の現状を見ると、残念ながらそうした判断は現実的と言わざるを得ません。
誹謗中傷については、様々な責任論や意見が渦巻きますが、「誹謗中傷をする人が悪い」ことは繰り返し伝えていきたいと思います。
とりわけ、まだ学生の選手たちがSNSの渦に巻き込まれていく現状を、私たちは真剣に受け止める必要があります。
3月24日から、世界フィギュアスケート選手権が始まります。きっと数多くのドラマが展開されることでしょう。
少しでも誹謗中傷が減り、選手への配慮ある投稿が増えることを祈っています。
【取材協力弁護士】
冨田 昂志(とみだ・たかし)弁護士
大阪大学法学部2010年卒業。国内大手自動車メーカーや裁判所勤務を経て、2022年4月に弁護士登録。大手IT企業で社内弁護士として開示請求などの対応に取り組んだ。奈良弁護士会所属。フィギュアでは「ダブルルッツ」が得意だった。インターネットトラブルに関するサイト(https://tomida-law.jp/)
事務所名:わかくさ法律事務所
事務所URL:https://wakakusa-law.com/

