壊れたテレビを前に尚子が放ったのは「対策してないのもお互い様」という衝撃の責任転嫁だった。謝罪もなく去る尚子。呆然とする美智に対し、帰宅した夫・照也は「これは泣き寝入りだ」と毅然とした態度を見せる。
テレビが壊れた瞬間、家は凍りついた
静まり返ったリビングに、えまの泣き声が響きました。突然の大きな音と、無残に壊れたテレビに驚いたのでしょう。
「……あーあ、壊れちゃった。これ、高いやつ?」
尚子が最初に口にしたのは、心配でも謝罪でもなく、値踏みするような一言でした。
私は震える手でテレビに駆け寄ります。電源ボタンを押しても、赤いランプが虚しく点滅するだけ……。
画面は完全に沈黙していました。
「駆! ダメでしょ、暴れちゃ。ほら、美智に『ごめんね』は?」
「ごめんねー」
駆くんは全く反省した様子もなく、また別の場所でおもちゃを振り回し始めました。
尚子は私の方を向き、申し訳なさそうに眉を下げて言いました。
「本当にごめんね、美智。でもさ……」
続いた言葉に、私は耳を疑いました。
「正直、小さい子がいる家でテレビをそのまま置いておくのも危ないよね?対策してないのも、お互い様っていうか……。うちは保護パネル貼ってるし、壁掛けにしてるよ? こういう事故って、いつか起きるものだしさ!」
悪いのは、対策しなかった私?
「え……?」
私は絶句しました。我が家の娘たちは、テレビに触れてはいけないと言えば守れる子たちです。
おもちゃを投げつけるなんて、私たち夫婦には想像もできない出来事でした。
それなのに――まるで「対策していない方が悪い」と言われたようで、胸の奥が冷たくなるのを感じました。
「……とにかく、今日はもう帰るね。駆も疲れちゃったみたいだし。また連絡する!」
尚子はそれだけ言うと、嵐のように帰っていきました。
後に残されたのは、壊れたテレビと、泣き止まない娘たち。そして、ただ立ち尽くす私だけでした。

