成人した子どもは、どこまで親が面倒を見る必要があるのか──。
大学を中退後、長年働かずに一人暮らしを続けている30代の息子について、父親から弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
相談によると、息子は漫画やゲームに夢中で、アルバイトを短期間経験したのみ。その後は定職に就いていないといいます。
さらに最近になって、母親が父親に無断で10年以上にわたり息子へ仕送りを続けていたことが判明。その総額は数千万円規模にのぼる可能性があるそうです。
父親は、成人した子どもに対する「扶養義務」について悩んでいます。
成人しているのに働かない子どもに対して、親はどこまで責任を負うのでしょうか。田村ゆかり弁護士に聞きました。
●親の扶養義務は未成年の子どもに限られない
──親の「扶養義務」は子どもが成人した後も続くのでしょうか。
法律上、扶養義務について「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています(民法877条1項)。つまり、親は子どもを扶養する義務がありますが、その対象は未成年の子どもに限られません。
判例・実務上、「未成熟子」も扶養の対象とされています。
未成熟子とは、経済的に自立して生活費を得ることが適当ではない状態にあり、身体的、精神的、社会的になお成熟する途中にあり、働くことでその健全な発育が損なわれるおそれがある子どものことです。
就労を期待することが難しく、他人の扶養を必要とする場合も含まれるとされています。たとえば、一般的な大学生は「未成熟子」にあたると考えられます。
●親が負担する生活費はどれくらい?
──相談のケースで、親は成人した子どもに対して扶養義務を負うのでしょうか。また、仮に認められた場合、どの程度まで生活費を負担する必要があるのでしょうか。
息子さんは、大学中退後に短期間のアルバイトをしたのみで、定職についていない30代とのことです。単に親に依存しているのか、それとも診断を受けていないだけで何らかの障害があり就労が困難なのかによって、評価は大きく異なります。
事情によっては、成人していても「未成熟子」と認められ、扶養義務の対象となる可能性はあります。
なお、親が未成熟子に対して負う扶養義務は「生活保持義務」とされ、親と同程度の生活水準を維持させる必要があります。
これに対して、子が老親に対して負う扶養義務は「生活扶助義務」とされ、自らの生活水準を切り下げない範囲で最低限の生活を支援すれば足りるとされています。
今回のケースでも、息子さんに就労できない事情が認められれば、成人していても親は扶養義務を負い、自己と同程度の生活を維持するための費用を負担する必要がある、という結論になります。

