【ヴェネチア・ビエンナーレと同時開催】「工芸的アプローチ」を通じて「GO FOR KOGEI」が新展を発表

GO FOR KOGEI

「遅さ」と「深さ」を武器に、現代社会へ静かに問いかける

本展のキュレーションを手がけるのは、GO FOR KOGEIアーティスティックディレクターの秋元雄史。彼が本展に込めたのは、情報と消費が加速し続ける現代において、「つくること」に宿るもう一つの時間感覚を取り戻そうという試みです。
ただし、本展は「工芸展」ではありません。工芸を一つのジャンルとして位置づけるのではなく、工芸的な態度を「批評的なレンズ」として用い、現代美術そのものを読み替えることを目指しています。陶、ガラス、漆、刺繍、繊維、木彫……多様な素材と向き合いながら制作を続ける10名の日本人アーティストの実践を通じて、速度や即時性を重視する現代の価値体系に対する、静かながらも確かな問いかけが展開されます。

10名の出展アーティスト

出展アーティストは、沖潤子、川井雄仁、桑田卓郎、コムロタカヒロ、シゲ・フジシロ、舘鼻則孝、中田真裕、三嶋りつ惠、牟田陽日、綿結の10名。それぞれが異なるアプローチで、素材と身体と時間の関係を作品に刻み込みます。

沖 潤子

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GO FOR KOGEI5沖 潤⼦《タイムマシン》2017年 Photo: Keizo Kioku ©Junko Oki, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA[出展作品]

刺繍という反復的な手仕事を通して、布に生活の時間と身体の記憶を縫い込む作家である。その実践は、長らく家庭の内部に属するとみなされ、可視化されにくかったフェミニンな労働の時間を、作品として静かに立ち上げる。

川井雄仁

GO FOR KOGEI6Photo: cocoro

GO FOR KOGEI7川井雄仁《ひまわり》2025年 ©Kazuhito Kawai[出展作品]

陶を単なる素材としてではなく、欲望や虚構、アイデンティティの揺らぎを投影する媒体として用い、過剰な色彩と量感を伴う造形を展開してきた。その背景には、1990年代の原宿文化やストリートファッション、マスメディアが生み出したイメージへの強い影響がある。

桑田卓郎

桑⽥卓郎《Cup》2025年 Photo: Suzuki Shimpei[出展作品]

貫入、石はぜ、釉薬の流動や破裂といった、通常は欠点や失敗とみなされがちな現象を積極的に引き受けることで、完成と崩壊が同時に立ち現れる造形を生み出してきた作家である。器と彫刻、日常と非日常の境界を攪拌する実践を続けている。

コムロタカヒロ

GO FOR KOGEI10Photo: Federico Radaelli

GO FOR KOGEI11コムロタカヒロ《Bat dragon》2023年 Photo: Takashi Ito (ito-kobo inc.)[出展作品]

ソフビ玩具やSF的イメージ、アメリカンコミックスといった視覚文化を起点に、木彫彫刻と量産フィギュアを横断する独自の彫刻表現を展開してきた。崇拝と消費の境界を揺さぶる、スケールの大きな造形世界が特徴だ。

シゲ・フジシロ

GO FOR KOGEI12Photo: Kai Flemming

GO FOR KOGEI18シゲ・フジシロ《Where is my paradise? (Basketballgoal / waterfall)》 2015年[参考]

ガラスビーズと安全ピンという、装身具や交易品としての歴史をもつ素材を用い、膨大な手作業の集積によって日常の風景を幻想的に変容させる。装飾的な美しさの背後には、労働と時間、消費社会の記憶が静かに刻み込まれている。

舘鼻則孝

GO FOR KOGEI13Photo: GION

Photo: GION舘⿐則孝《フローティングワールド》2024年 Photo: Osamu Sakamoto ©NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA[参考]

「装うこと」を身体の外観的な装飾ではなく、社会的役割や儀礼、価値観を身体に刻み込む行為として捉え、日本の伝統文化を現代的に再構築してきた作家である。代表作《Heel-less Shoes》は、装いが身体の感覚や行為をいかに変容させるかを可視化する彫刻的存在として知られる。

中田真裕

GO FOR KOGEI17Photo: Yu Kadowaki

GO FOR KOGEI20中⽥真裕《サンダークラウド》2021年 Photo: Tomoya Nomura[出展作品]

蒟醤(きんま)を中心とする伝統的な漆技法を出発点に、漆を単なる「装飾」から解き放ち、時間や記憶の揺らぎを受け止める現代的なメディウムとして再定義してきた作家である。数十層に及ぶ塗り重ねと研ぎの工程が生む色の奥行きは、物質の内部に沈殿した時間そのものを可視化する。

三嶋りつ惠

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ガラス産業の中心地・ムラーノ島の熟練職人との協働を通じ、無色透明のガラスのみを用いた彫刻作品を制作してきた。光の屈折や反射、影として空間に解き放たれるその作品は「火の果実」とも呼ばれ、光そのものを彫刻化する存在として空間と一体化する。

牟田陽日

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GO FOR KOGEI22牟⽥陽⽇《Sometime Somewhere One through One》2025年 展⽰⾵景「⽪膚と内臓―⾃⼰、世界、時間」 (台南市美術館、2025年)[参考]

九谷焼に学んだ色絵の技法を基盤に、日本文化において周縁化されてきた女性像や自然観を、陶磁器という媒体を通して再解釈してきた作家である。民間伝承の「山姥」をモチーフに、女性の身体や経験がもつ揺らぎと多層性を、手捻りの造形と絵付けによって可視化する。

綿 結

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糸を撚り、染め、織るという原初的な工程から制作を始め、布の内部構造や重力そのものを立体として立ち上げる作家である。平面と立体、支持体と彫刻の境界を曖昧にしながら、素材と身体の関係を空間全体で体験させる繊維彫刻を生み出す。

配信元: イロハニアート

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