地下鉄サリン31年、被害は終わっていない 国際基準から問う日本の支援制度

地下鉄サリン31年、被害は終わっていない 国際基準から問う日本の支援制度

●サリン被害者支援の現状と課題

2008年、「オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律」が施行された。

地下鉄サリン事件および松本サリン事件も対象とされ、死亡、障害、傷病といった類型ごとに定額の給付が定められた。

国が被害者救済に関与する仕組みを設けた点は重要である。加害団体の賠償能力が限定的である中、国が一定の補償を担うことを明確にした意義は小さくない。

しかし、基本的に一回払いの給付を前提としている。慢性的な体調不良や後遺症など、長期にわたって続く影響を継続的にフォローする仕組みとはなっていない。被害を「一定時点で確定するもの」と捉える設計となっている。

また、後述のように救済策の策定と実施に関して、被害者の意味のある参加が配慮されてきたとは言えない現実もある。

●外からは見えにくいサリンの被害

サリンは神経剤であり、急性期には「アセチルコリンエステラーゼ」という酵素の働きを阻害し、呼吸困難やけいれんなどの症状を引き起こす。

その長期的影響については現在も学術的議論が続いている。急性期の検査値だけで、その後の健康状態を十分に説明できるのかについては、必ずしも確定的な理解が共有されているわけではない。

実際、事件から20年以上を経ても、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が疑われる人が一定割合存在するとの報告がある。外からはわかりにくい慢性的疲労などが続いている可能性は否定できない。

ここで問われるのは、「当時給付があったかどうか」ではない。時間の経過とともに変化する被害の実態に、制度が追いついていけているかどうかである。

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