●少年からの手紙にあった「犯行理由」
事件から3カ月後、岸辺さんを襲った男たちが逮捕されたという知らせがあった。強盗致傷容疑で逮捕されたのは、20代の男2人と10代の少年2人。岸辺さんの予想通り、若年層による犯行だった。
逮捕された直後、少年2人から謝罪の手紙が届いた。
「捕まってからすぐに、弁護士を通じて謝罪文が送られてきました。ただ、それも形式的なものでしたね。たぶん見本に習って弁護士と一緒に作ったんだと思います」
最初にヘルメットで殴ってきた少年からの謝罪文は、次のような内容だ。
「僕は◯◯さんに対し、ヘルメットで殴りつけ、顎や目、手などを骨折させる怪我を負わせ、パソコンやスマートフォン、エコバッグに入っていた物を奪い取り、お金やクレジットカードなども取るという強盗傷害事件を起こしてしまいました。
◯◯さんは許せない気持ちであると分かっていますが、謝まっても謝りきれない事をしてしまい罪の重みを今、とても強く感じていて、◯◯さんにどう伝えるべきかも分からないですが、手紙で謝らせて欲しいと思い、手紙を書かせていただきました。
僕は、お金が欲しいと思って、◯◯さんを襲った訳ではありません。先輩に言われて怖くなってしまい、◯◯さんを今回襲うことになってしまいました。言い訳にならないことは分かっていますが、先輩にできませんと言えなかったことをとても後悔しています」(一部抜粋、原文ママ)

●「きちんと裁かれてほしい」
手紙では続けて、被害弁償を申し出て、許しを求めていた。手紙を受け取った岸辺さんは、複雑な気持ちになったと語った。
「強盗という犯罪の全体像を描いたのは、手紙にある通り、この少年じゃないと思います。一緒にいた大人の男たちでしょう。でも、実際に殴るのは少年にやらせている。少年法で守られていて、捕まっても罪が重くならないですから。
強盗事件を起こした少年たちはどういう環境で育った子なのかなと考えてしまいますね。甘いかもしれないけど、許してあげたいという気持ちになります」
しかし、一方でこんな思いも抱えている。
「少年の1人はヘルメットで思いっきり人の頭を殴ってるんです。下手したら、相手は死ぬわけですよね。殴れと言われたとしても、そこはやっぱり止められなかったのかなとも思います」
少年たちの弁護人は示談を求めてきたが、岸辺さんは悩んだ末に断った。
「自分が示談に応じたことで、事件を許したと思われることが嫌だと思いました。それが、事件の裁判に影響を及ぼすかもしれない。
少年たちはそれぞれ少年法による判断があるのでしょうが、成人の男2人は裁判できちんと裁かれてほしいと思っています。裁判も被害者として最後まで見守るつもりです」
いまも、20代の男2人からの謝罪は届いていない。

