しかし、あまりの人の多さから、新規開拓を考えている人も多いのではないだろうか。そこで注目したいのが、地元民が集う“ディープな街”だ。
今回は「一人で楽しむディープな大阪」と題し、大阪在住のウォーカープラス編集部員が九条(くじょう)エリアへ。“カレー激戦区”と言われるこの街で見つけた、一度は行ってみてほしい3店を紹介する。

■「京セラドーム大阪」に「松島新地」…さまざまな熱を感じる街・九条
大阪市の西部に位置する九条エリア。近くにはオリックス・バファローズの本拠地であり、推し活に励む人にとって夢の場所とも言える「京セラドーム大阪」がある。大阪メトロと阪神電鉄が通り、大阪の主要駅からも比較的アクセスのいい街だ。
ちなみに、大阪市内には「九条駅」と「西九条駅」があり、安治川を隔てて隣同士ではあるが、今回は「九条駅」周辺の店を紹介する。

いわゆる“ミナミ”を生活圏としている編集部員。自転車で行ける距離にあるものの、九条は未知の世界だ。なぜ今まで立ち入らなかったかというと、日本三大新地の一つ「松島新地」があるからだった。“新地がある”という共通点から、西成の次に行きづらいイメージを持っていたのだ。
しかし大阪で暮らしていると、「九条は“カレー激戦区”」と耳にすることもしばしば。そこで今回、「そこにおいしいカレーがあるのなら、どんな街でも怖くない!」と、ついに九条に足を踏み入れることとなった。
■使い勝手も実績もピカイチ!ディープな街を明るく照らす「サケトメシ」
1軒目は、ミャンマーカレーを提供する「サケトメシ」。ド派手な外観が特徴的な“カレーも食べられる居酒屋”で、夕食としてカレーを味わうだけでなく、ミャンマー料理をアテにお酒が飲める。

魅力的なのは使い勝手だけではない。同店は、西日本最大級のカレーイベント「カレーEXPO」の第11回(2024年)で準グランプリ、第12回(2025年)でグランプリを獲得している超実力派。多くのカレー好きのお墨付きということだ。
鮮やかな黄緑色の壁が映える店内は、どこか楽しげな雰囲気。店主の徳広勇太さんが気さくに話しかけてくれるので、一人で訪れても全く居心地が悪くない。

今回注文したのは、「ミャンマーカレー」の中から「ミャンマーチキン」と「ミャンマーポーク」、そして日替わりカレーの3種あいがけ。
この日の日替わりカレーは「クリーミーシーフード」で、こちらはミャンマーカレーには分類されないそう。日替わりカレーにミャンマーカレーが登場することもあるようだ。
カレー以外のメニューも豊富なので、せっかくならと、現地でよく食べられるという「ラペットゥ」も注文した。

同店の「ミャンマーカレー」は、インドとタイのスパイスやハーブを使用し、徳広さんが「油戻し煮」と呼んでいる現地の調理法で作られている。日本でよく食べられる欧風カレーと違い、たっぷりの油で炒めた大量のタマネギの水分を飛ばしてから、さらに油を戻すという。ミャンマーはとても暑いため、腐るのを防ぐために多めの油が必要なのだとか。
ひと口食べてみると、思っていたよりクセがなく、食べやすい。暑い国の食べ物なので勝手にすごく辛いイメージを持っていたが、全く辛さを感じない。油が入っているからかこってりしており、そのうえタマネギの甘味やナンプラーのコクもあるため、どんどんご飯がすすむ。
日替わりカレーの「クリーミーシーフード」がミャンマーカレーではない分、あっさり感じられ、ちょうどいいバランスだ。ちなみに、現地ではご飯とカレーを分けて食べるのが主流だそうで、ミャンマー人が来店した際は分けて提供するという。

「ラペットゥ」は、ミャンマーでは日常的に食べる、いわば“お茶っ葉サラダ”。茶葉を竹筒に入れて発酵させ、キャベツ、ニンニク、ゴマ、フライドビーンズ、干しエビなどと和えて、塩やレモンで味付けしたものだ。
「ミャンマー人は野菜をよく食べるので、店に入るとサラダの種類がたくさんあるんですよ。その中でも『ラペットゥ』はよく食べられています」と徳広さん。ほんのりと茶葉の苦味が感じられ、なんだかクセになる味わいだ。たしかに、毎日食べても飽きない気がする。

同店は2015年にオープンしており、もともとはスパイスカレーを提供していたのだとか。2018年ごろ、ミャンマー人である常連客の奥さんが作ったミャンマーカレーを食べた徳広さんはその味に衝撃を受け、3カ月後にはミャンマーへ旅立っていたという。
「ミャンマーカレーの作り方は現地のホステルなどで学び、ミャンマー料理は大阪在住のミャンマー人から教わりました。ちょうど大阪市内にスパイスカレー店が増えまくっていた時期で、差別化が必要だったんですが、『武器を探していたときに、武器が見つかった』という感じですね」


徳広さんとミャンマーカレーの運命的な出合いと、徳広さんの凄まじいフットワークの軽さから生まれた現在の「サケトメシ」。ここ数年は東西の大手百貨店への催事出店なども行っており、ミャンマーカレー店の代表格となりつつある。
■ネパールの“一汁三菜”!?「ダルバート」が食べられる「Asian kitchen cafe 百福」
2店舗目は、ネパールの国民食「ダルバート」を提供する「Asian kitchen cafe 百福」。「食べログ百名店」の常連店で、「Japanese Curry Awards」での受賞歴なども持つ、知る人ぞ知る名店だ。

南アジアの雰囲気が漂う外観や内観は非日常感たっぷりで、このあとの仕事のことを忘れてしまいそうになる。しかし、非日常感は入店までの道のりにも。同店は松島新地の中にあるのだ。
店主の田中真一さんに「めっちゃビビりながら来ました」と正直に話すと、「お店のほうを冷やかすようにジロジロ見なければ、全然大丈夫です。男性も女性も目的があって来る場所なので、意外と穏やかな街なんですよ(笑)」と教えてくれた。女性客も多いそうで、ひと安心だ。

席につき、看板商品の「ダルバートスペシャル」を注文する。この日は「チキン」と「山羊」があり、「チキン」は基本的に固定で、もう1種は日によって水牛やマトンになることも。もちろん、両方を選ぶことも可能だ。今回は2種とも注文した。
丸いトレイに、2種のカレーとご飯、ダル、副菜9種がセットになった「ダルバートスペシャル」は、ビジュアルもインパクト大。

すごく豪勢な料理に見えるのだが、日本で言う“一汁三菜”的なものだそうで、いわゆる「豆スープ」の「ダル」は、味噌汁のような立ち位置なのだとか。「言ってしまえば、ご飯と味噌汁を混ぜて食べるようなものです。カレーはおかずという感じですね。日本料理の“さしすせそ”がスパイスに変わっただけです」と田中さん。そう聞くと、すごく身近な料理に思えてくる。

まずはご飯とダルを一緒に食べる。豆の甘味が強く、優しい味わいのスープだ。次にカレーを混ぜるのだが、「サケトメシ」のミャンマーカレーと同様に辛さが控えめで、どちらかというとごろごろと入った肉を楽しむ煮込み料理のように思える。どこの国でも毎日のように食べる料理はこういうものなのだと、あらためて知ることができた。

そのあとは、思い思いに副菜を混ぜながら食べ進める。大根の漬け物とホウレンソウの炒め物は現地でも定番の付け合わせらしく、それ以外の副菜は日本の旬の食材をネパールの調理法でアレンジした、同店のオリジナルだ。自分で混ぜながら組み合わせを試すのが楽しくて、夢中で食べてしまった。

今も年に一度はネパールに行くという田中さん。ダルバートを作るにあたり2年ほどネパールで修業したそうだが、ダルバートを知ってから旅立ったのではなく、旅先で出合ってその味のとりこになってしまったことから「日本でダルバートを流行らせたい」と思い立ったのだとか。
田中さんは、「南アジアの人は本当に気さくで、店で『ダルバートの作り方を知りたい』と言うとすぐにキッチンに入らせてくれたり、レシピを教えてくれたりと、とてもオープンなんです。現地の宿で『うちのレストランでシェフに教わりなよ』と言ってもらえて、そこから別のレストラン、さらに別のレストランと、運よく弟子入りできました。スパイスカレーすら知らなかったので、朝から晩までみっちり学びましたね」と話してくれた。

そんな田中さん、次はインドネシア料理を学ぼうと、現地に滞在中だ。そのため、通常は昼・夜営業だが、2026年3月末まではランチのみとなっている。通常営業のときは週末限定でタイ料理を振る舞うこともあるので、いつかそこにインドネシア料理が仲間入りするかもしれない。さらに、毎月第3週目は「麺屋百福」となり、約一週間だけカオソーイが食べられる。随時Instagramで知らせているのでチェックしてみよう。
■BEEF ONLY!独創的かつ食べやすいスパイスカレーでファン増加中の「ココロカリー」
最後に紹介するのは、2024年3月にオープンした「ココロカリー」。何年も前からカレー激戦区だった九条エリアでは珍しい新店だ。「『よう激戦区の九条に乗り込んできたなぁ!』と言われます(笑)」と話すのは、店主のこころさん。

同店は「炭火焼肉 あさくら」で間借り営業をしているため、基本的にランチのみ。店内には焼肉店ならではの香ばしいにおいが漂い、入った瞬間から食欲を搔き立てられる。

メニューには「本日のカレー」が常時2種あり、2日ごとに種類をチェンジしているという。そのレパートリーはなんと50種以上。固定のカレーはなく、訪れるたびに違うおいしさに出合えるのが特徴だ。
今回注文したのは、一番人気の「ココロスペシャル」。「本日のカレー」2種のあいがけに、焼きハラミをトッピングした、名前通りスペシャルなひと品となっている。焼きハラミはオーダーごとに目の前で焼かれるため、待っている間の音や香りがたまらない。

この日のカレーは、「牛タンハンバーグ」と「とろ牛すじの白味噌辛子蓮根」。スパイスカレーといえば鶏や豚を使ったものが多いが、同店のカレーは「炭火焼肉 あさくら」で出される肉を使用しているため、100%牛肉だ。昼から焼肉店の肉が食べられるのが、なんとも贅沢。

まずは、特に味わいが気になる「とろ牛すじの白味噌辛子蓮根」から。白味噌のまろやかさと牛すじの旨味が絶妙にマッチして、その意外性に驚く。スパイスや和ガラシなど、食べ進めるごとにいろいろな味わいを発見でき、スプーンが止まらない。ほろほろの牛すじと、サクサクとしたレンコンの食感のバランスも抜群だ。

続いて、「牛タンハンバーグ」。牛タンを100%使用したひと口サイズのハンバーグが入っており、同店の一番人気だそう。デミグラスソースのような甘味の中にスパイスのアクセントが感じられ、欧風カレーとはまた異なる味わいだ。シンプルながらも奥深いコクがあり、スパイスカレー初心者にもおすすめしたい。

ひと通りカレーを味わったら、トッピングの焼きハラミや、スパイスカレー店の名物「スパイスたまご」をのせながら食べて行く。焼きハラミはとても柔らかく、カレーをよりリッチな味わいにしてくれる。そこにまったりとした「スパイスたまご」を加えれば、一気に至福のひとときに。

「3年ほど前にスパイスの沼にハマりました」と話すこころさん。さまざまなスパイスカレーを食べ歩いていたそうだが、「自分で作ったらいっぱい食べられるし、アレンジもできる!」と好きが高じた結果、カレーを作るようになったのだとか。
そこからスパイスのことを猛勉強し、資格を取得したのち、かつてアルバイトしていた「炭火焼肉 あさくら」での間借り営業をスタート。「炭火焼肉 あさくら」の肉に惚れ込んでいたことから、牛肉を使ったカレーを日々開発している。
「牛肉の旨味を引き出せるように、旬の食材やスパイスを厳選しています。『おもしろそう』と思ったら、そのひらめきを大切に、まずは作ってみるようにしていますね。クセが強くなりすぎないよう、“親しみやすいスパイスカレー”を目指して、日々試作しています。『次はどんなカレーを作ろうかな?』と考えるのがとても楽しいです!」
今回食べた「とろ牛すじの白味噌辛子蓮根」のように、和の要素をプラスしたカレーのほか、「ホルモンチゲカレー」といった韓国風のものが登場することも。ラインナップするカレーの内容はInstagramで毎日発表されており、その多彩なアイデアに圧倒されてしまう。
なお、ドリンクは「炭火焼肉 あさくら」のものを提供しているため、ビールやハイボールなど種類豊富なお酒で、昼から“カレー飲み”が叶うのもポイントだ。
■ディープだけどあったかい。そのギャップのとりこになる街
今回、カレー店を探すべく九条に何度も足を運んで感じたのは、下町風情から来る居心地のよさ。「そんなビビりながら行く街じゃない」というのが素直な感想だ。商店街は地元民でにぎわい、九条に長く住む人が営む店も多いので、雰囲気があたたかく、地元に帰ってきたような気分になった。
松島新地についてだが、新地自体が広いため迷い込んでしまうこともあり、最初は困惑した。しかし、道のように広がっているからこそ特別な空気が流れていることもなく、別に危険なことがあるわけでもない。むしろ女性である編集部員としては、多くの女性が働くエリアだからこその安心感があった。
もちろん、わざわざ前を通ったり、料亭や女性たちをじっくり見たりするのはよくないが、ルールではなくマナーの範疇だ。マナーを守れば何も起きない。それはどの街だって同じはずなのに、勝手なイメージから足が遠のいていたことを後悔した。

「新地があるところでしょ?」でおしまいはもったいない。個性豊かなカレーを食べに、一度九条に足を運んでみてはいかがだろうか。
取材・文・撮影=ウォーカープラス編集部
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