面談当日、私はしゅんと一緒に保健センターを訪れた。中西さんは、しゅんがリラックスできるように、万引きのことには一切触れず、しゅんの好きなことや、保育園での出来事、家での過ごし方など、さまざまなことを優しく尋ねてくれた。しゅんは最初は少し緊張していたようだが、中西さんの温かい雰囲気に包まれ、だんだんと口を開き始めた。私は別室で待機し、面談が終わるのを待った。
しばらくして、中西さんが私の元へ来てくれた。「しゅん君、たくさんお話してくれましたよ」中西さんは、穏やかな表情で私に語りかけた。「万引きのことは、あえて触れませんでした。代わりに、しゅん君の心の中にあった、いろいろな不満や寂しさの部分に耳を傾けてみました」私は、中西さんの言葉にゴクリと息をのんだ。しゅんが、何か不満を抱えていたというのだろうか。
「しゅん君ね、こう言っていました。『ママと、もっと遊びたい』って」中西さんの言葉に、私はハッと息をのんだ。もっと、遊びたい?
「それから、『お兄ちゃんなんだからってママは怒ってばっかり』って。それから、『怒っているママは嫌い』とも言っていました」
中西さんの言葉を聞いて、私の頭の中に、これまでのしゅんとの時間が駆け巡る。ひなが生まれてから、しゅんとの時間が減っていたのは事実だ。ひなの育児に追われ、しゅんに構ってあげられないことが増えていた。そして、万引きの一件以来、私はしゅんに対して、怒鳴ってばかりいた。しゅんは、私の怒った顔を見るのが嫌だったのだろう。
第三者を介して見えてきた息子の本心
息子・しゅんの万引きがショックで、向き合えない日々が続いていました。ですが、保健センター・中西さんのおかげで、万引きをしてしまった理由が判明。息子は、さみしさや愛情不足を抱えていたのです。
このあと、中西さんから意識的にハグや抱っこなどのスキンシップを増やしたり、一緒におしゃべりする時間を設けるなど、具体的なアドバイスをもらいます。途方に暮れていた啓子にとって、一筋の光が見えた瞬間でした。
少しずつ、親子関係を修復
その日の夜、しゅんが寝る前に、私は彼をぎゅっと抱きしめた。「しゅん、ママね、しゅんのこと、世界で一番大切だよ」そう言うと、しゅんは私の腕の中で、少しだけ身をよじった。いつもなら「もう、ママ!」と照れて離れるのに、その日は、少しだけ私にしがみつくようにしていた。その小さな変化が、私には何よりもうれしかった。
次の日からは、中西さんのアドバイスを実践してみることにした。家でテレビを見ている時も、洗濯物をたたんでいる時も、できるだけしゅんを膝に乗せてあげるようにした。買い物に行く時も、しゅんと手をつなぎ、今日の夕食は何がいいか、しゅんの好きなキャラクターの話など、いろいろなことを話しかけるようにした。
最初は、しゅんも少し戸惑っているようだったが、徐々に慣れてきたのか、自分から「ねえ、ママ!」と話しかけてくれることが増えた。
さっそく、中西さんのアドバイスを実践。すると、目に見えて、親子関係は改善へと向かいます。
さらに、息子・しゅんは驚くべき成長を遂げます。

