
人気ミステリー小説を原作とした「推しの殺人」に、心優しき弁護士・矢崎恭介役として出演する増田貴久。殺人の隠蔽という大きな罪を背負いながらも懸命にステージに立ち続けようとする、3人組地下アイドルグループ「ベイビー★スターライト」のメンバーに、どう絡んでいくのか注目が集まる。
このたび、増田にインタビューを実施。ドラマオリジナルとなるキャラクターの役作りから、二度目の共演となる城田優とのエピソード、さらにアイドル「NEWS」としての活動まで、幅広く語ってもらった。
■主人公たちの心境に「共感した」
――ドラマ「推しの殺人」は、アイドルが主人公です。アイドルである増田さんは、脚本を読まれてどのようなことを感じたのでしょうか。
僕もアイドルとして興味深く読ませてもらいました。主人公となる3人の女の子たちは、それぞれ違った環境で育って違ったバックボーンを持っているのに、アイドルという同じ夢を追いかけている。それこそ最初は、やる気もそれぞれ違っていたと思うんですよ。
それが殺人をきっかけに、みんなが団結していく。原作もそうでしたけれど、そういう過程や、ひとつひとつのシーンがすごく丁寧に書かれているんです。その中で描かれるアイドルとしての気持ちみたいなものに、共感したんですよね…。
成功したくて頑張っている子たちがすごく小さなボタンの掛け違いで、殺人に絡んでしまう。殺人って絶対にダメなことだけれど、なぜ殺人を犯してしまったのか。彼女たちの本心にも考えさせられる部分が多かったです。
――増田さんが演じられる弁護士の矢崎恭介は、原作にはない役ということですが。
そうなんです。城田優くん演じる河都潤也は原作にもある役ですが、僕が演じる河都の親友・矢崎恭介は、ドラマオリジナルの登場人物です。二人は大学の同級生。河都はテレビにコメンテーターとして出演する有名なマーケティング会社の社長で、学生時代からリーダー的な人物。矢崎は、河都の出資で弁護士事務所を立ち上げた。だから部下ではないけれど、河都に対して一歩引いているところがあるという役です。
ハラハラドキドキの展開が進んでいく中に、僕は結構ふわっとした感じで出るので、箸休的な存在ってことになるのかな(笑)。
――原作ファンにも気になる存在になりそうですね。
実は、出演のお話をいただいたときにもらったプロットには、矢崎がいなかったんです。「あ、増田くんの役、まだ入ってないから」って(笑)。それでまず、原作を読みました。その原作がめちゃめちゃ面白くて!
この物語に矢崎がどんな風に絡むんだろうというのは、ドラマを見てくださる視聴者の皆さんと同じワクワク感で楽しんでいたと思います(笑)。原作ではわからない部分…、矢崎がなぜ河都と仲がいいのか、アイドル3人とどのように絡んでいくのかがわかっていくのかは、僕自身も楽しみです。
■役作りは「小物からこだわった」
――矢崎を演じるにあたって、髪色が黒髪に変わりましたね。役作りはどのように?
監督さんとプロデューサーさんと、「どういう弁護士なんだろう」というお話しをしましたね。普段どんな人間なのか、どんな風に働いているのか、敏腕弁護士なのか…など。僕は結構見た目から作りたいというか、見た目ができてくると内面が整ってくるタイプなので、衣装から小物までけっこうこだわっています。
――セットアップは着ているけれど、シャツはノーカラーで、ちょっとカジュアルな感じなんですね。
裏設定では、矢崎は国選弁護をやっているということなので、テレビでよく見る敏腕弁護士みたいな感じではないと思うんですよ。だから、綺麗めなカジュアルで衣装を揃えてもらいました。
弁護士役だから僕もはじめはカッチリしたスーツなのかなと思ったんだけれど、法廷じゃなかったら、ガチガチのスーツは着ないんじゃないかなと思ったんです。打ち合わせや外に出る用事がなければ、シャツもジャケットも着てないんじゃないか、なんならサンダルとかを履いているかもしれない…って。
――役に入るときって、演じる人物と自分の近いところを探しますか。
あんま探してないかも…。セリフも、普段の自分から出てこない言葉の方がワクワクします。だから自分の言いやすいように変えたりもしないし、「なんでこのセリフをこういう風に言うんだろう」とずっと考えちゃう。
■今回の現場は「差し入れにこだわりたい」
――城田優さんとは親友役ということですが、お二人は共演経験もありますよね。
はい。『古見さんは、コミュ症です。』(2021年、NHK)で共演しています。この時も、同級生役でした。僕は城田くんと同級生に見えないと思っているんだけどなぁ(笑)。音楽番組でも共演しているし、高校生のころからプライベートでカラオケに行く仲。歌、上手いっすよね(笑)。
同級生役コンビとして、2人で力を合わせて現場を盛り上げていきたいですね。まずは、差し入れかな~。女の子3人が主演なので、どっちの差し入れが女の子に人気があるのか競いたいですね。
――女の子に差し入れするんだったら、何がいいでしょうね。
やっぱフルーツでしょ! これは、間違いない。あとは持って帰れる系の小瓶に入っているやつとか、見た目がかわいいパンとかね。
――ご自身で選ぶんですか?
ドラマ期間中だったら、中空きの時間に近場のデパートの食料品売り場に自分で買いにいきますね。マネジャーさんに頼むよりも、自分が見て「いいな!」と思うものを選びたいんですよ。
「今の季節なら、シャインマスカットだよね」とか、「カットフルーツがいいよね」とか。基本は自分が食べたいものとか食べやすそうなもの選びます。で、持てないくらい買っちゃう(笑)。
■職業病は「同じ話を繰り返しちゃう」
――マメなんですね。「推しの殺人」は、殺人の隠蔽という誰にも言えない秘密を抱えている主人公たちの物語ですが、増田さんは秘密を隠し通す自信ありますか?
秘密かぁ。この仕事をしていると、「コンサートします」とか、「ドラマ出ます」というのを発表する『解禁日』というのがあるじゃないですか。早く言いたくてうずうずしちゃうから、ちゃんと予定表に入れています。「ここまでは言っちゃいけない」というのはちゃんと守っていますね。
――お仕事以外の秘密はどうですか?
僕、結構秘密を守れるタイプだと思いますよ。
――口が堅いんですね!
基本的に口は堅いんだけれど、この仕事をしていると会う人が多いので、誰に話して誰に話してないのかわからなくなっちゃうんだよね。新鮮な顔して、同じ話を同じ人に3回くらいしちゃう(笑)。
過去1番恥ずかしかったのは、NEWSメンバーの加藤シゲアキから聞いた話を加藤シゲアキに「内緒だよ」って話したことだな。
――秘密の話、してるじゃないですか(笑)。
あはは(笑)。でも、深刻な内容じゃないから。2、3分ぐらいのエピソードトークなんだけれど、加藤シゲアキは最後の最後まで全部聞いてから、最後に「それ俺が話したやつ」って。
――優しく受け止めてくれた?
いや、優しくないっしょ(笑)。
■
――今、隠蔽していることはありますか?
あるね、家が汚い(笑)。お掃除大好きとか、キレイ好きとかいわれて、もはや潔癖症疑惑も出ているけれど、家に服が多すぎて、けっこう汚い。
――クローゼットまわりですか。
そうそう。扉にもかかっていたりする。でもね、クローゼットの中はすごく綺麗ですよ。ハンガーの向きも全部揃えてる。身近な人も「増田の家はピカピカ」というイメージを持っているんだけれど、実は、そうでもない。でも、「めちゃめちゃキレイで広い家に住んでる」ってことにしています(笑)。
――じゃあ友達に「今から遊びに行っていい?」と言われても大丈夫ですね。
あ、それは入れない。ダメなんですよね…。どっちにしても見せることはないですね。
■美味しいご飯に「僕も誘って!」
――3人のアイドルたちのように悩みがあったとしたら、誰かに相談しますか?
基本的に、あまり悩まない。でも、悩むより前に相談するかも。誰かと一緒に悩む案件だったら限界まで悩み通すかな。答えを出さなきゃいけないギリギリまで。
――逆に、人から相談されることは?
どうかな? 人生において、そんなに重要な相談はされたことないですね。「何食べる?」とか、「美味しいご飯屋さん教えて」みたいな軽いのはしょっちゅうあるけれど。
――頼りにされていますね。
でもね、美味しいお店を教えたら教えたで、僕のことを誘わないのはなんで? 僕が東京にいて、大阪とか福岡のご飯屋さん教えてだったら誘われないのは当たり前だけれど、東京で聞くんだったら誘えばいいのに!
――確かに。増田さんのお友だちの皆さん、次は誘ってくださいね(笑)。ドラマのタイトルは「推しの殺人」です。増田さんの目下の推しは?
あまりハマらないタイプですね。推される側やらせてもらってますし!
■ファンに言われた「ありがとう」に感動
――では最近、推される側として心に響いたこととはどんなことでしたか?
自分たちがNEWSとして活動してることを「ありがとう」と言ってもらえるのは、グッときますね。最近のコンサートでは、登場しただけで泣いていたり、泣きながら歌を聴いてくれる方がいて、こっちとしては、「大丈夫よ、ずっといるから」という気持ちになる。
なんだか「ありがとう」と言ったら、「ありがとう」と返してくれるみたいな関係なんだよね。昔はそうじゃなかった気がする。僕らの歌を聞いて泣いてくれているんだとしたら、その歌がその人の「何か」になってたんだなと思えるから、尚更グッときます。
――歌手冥利に尽きますね。
そうそう、そうなの。
――最後に、「推しの殺人」の見どころを教えてください。
話題作なので原作を読まれてる方も多いと思いますが、ドラマには原作にはないストーリーが追加されていますので、また新たな気持ちで「推しの殺人」に接することができると思います。原作を読まれてない方は、ドラマを見たら原作を読みたくなるんじゃないかな?
アイドルと殺人という、結びついちゃいけないテーマの中で、僕が演じる矢崎は、ふわっとする存在でありたい。矢崎って、原作と新しいストーリーを繋いで広げてくれる役だと思うんです。その矢崎が主人公の3人のアイドルとどう絡んでいくのかは、原作にはない面白さになると思います。
ハードルは高いけれど、原作ファンの方には「矢崎、面白かったな」と思ってもらえると嬉しいし、僕も矢崎が物語にどう関わっていくのか一緒に楽しんでいきたいと思っています。
◆取材・文=坂本ゆかり

