今から50年前にアイスランドの女性90%が一斉に参加したストライキ「女性の休日」。
その歴史的な1日を次世代に伝える絵本『本当にやる!できる!必ずやる! アイスランドの「女性の休日」』が、2025年10月24日〈ゆぎ書房〉より発行されました。
ポップで温かみのあるイラストとともに描く絵本は「子どもにも読み聞かせしたい」と多くの人に口コミでも広がりました。絵本の出版と同時に、ドキュメンタリー映画『女性の休日』も全国で順次公開されると、更に注目を集め、なんと出版からわずか4か月で重版が決定!
今、なぜ「女性の休日」なのか!?
絵本の出版にまつわる経緯や想いを、ゆぎ書房の代表・前田君江さんに伺いました。

アイスランドの「女性の休日」とは!?
「女性の休日」は、1975年10月24日にアイスランドで、女性がいないと社会が回らないことを訴え、全女性の約90%が、仕事や家事を放棄した歴史的なストライキです。
男女の賃金格差や性差別に抗議し、女性がいないとどのような影響があるのかを可視化してジェンダー平等を進めた、世界的に有名な社会運動です。
男女の性差によって生じる格差を指す「ジェンダーギャップ」。
日本のジェンダーギャップ指数は、148カ国中118位と、国際社会から大きく遅れをとっています。
そうした中、16年連続で1位を記録している国がアイスランドです。
しかし、アイスランドが昔からジェンダー平等な国だったわけではありません。
アイスランドにも「女性は結婚して家で家族の世話をするのが一番だ」と言われていた時代があります。
学校へ行って勉強するのは男の子だけで、女の子は家で料理や洗濯や兄弟の世話をしていたことも。
働く女性のお給料は男性の半分しかもらえないことも。
女性の名前は表札にはのらないことも。
町でトイレを使うのに女性だけお金を払わないといけないこともあったのです。
「それはおかしいのでは?」
「女性は居ないものとされているように感じる」
「なぜ?」
女性たちが声をあげ行動したのが「女性の休日」というストライキでした。

今日、アイスランドは、世界で最もジェンダー平等な国として評価されていますが、男女間の賃金格差は今でもあり、女性の平均収入は男性の平均収入の約77%に留まっています。
「女性の休日」は、1985年、2005年、2010年、2016年、2018年、2023年、そして50周年となる2025年と、何度も継続して開催され、最初にアクションを起した1075年から50年の間に、実に8回も繰り返され、女性のストライキやデモ行進が行われてきました。
アイスランドにおける女性の権利運動はある程度の成功を収めてきていますが、今もなお声をあげつづけているのです。
ほぼ嗅覚!読めないアイスランド語。“一目惚れ”で出版を決意
このストライキの歴史的な意味やメッセージを幅広い世代に伝える絵本が『本当にやる!できる!必ずやる! アイスランドの「女性の休日」』です。
前田君江さんは、邦訳版を出版したゆぎ書房の代表です。絵本との出会いや、出版するに至った経緯を伺いました。

ゆぎ書房 前田君江
イラン・ペルシア文学研究を志していたが、「解説」では伝わらないことが絵本で伝わる面白さに目覚め、すべてを放り出して絵本を探す旅に出る。絵本翻訳者として、『ラマダンのお月さま』(解放出版社)、『イ―ドのおくりもの』(光村教育図書)、『石たちの声がきこえる』(新日本出版社) などを出版。2020年に、ゆぎ書房を創業。2007年より東京大学教養学部非常勤講師。このほか、「認定絵本士」養成講座講師(常磐短期大学)、桜美林大学非常勤講師など、翻訳絵本に関わる講演やワークショップ開催多数。
この原書との出会いは2023年だったと振り返ります。
前田さんは、元々イラン・ペルシア文学研究を志していましたが「解説」では伝わらないことが絵本で伝わる面白さに目覚め、中東など世界各地の翻訳絵本を出版。
2020年に自宅のある東京都八王子で“世界を旅する翻訳絵本の出版社”ゆぎ書房を創立しました。
この絵本との出会いのきっかけとなったのは、八王子の隣にある多摩市で行われたアイスランドのイベントでした。多摩市はオリンピックのアイスランド選手を受け入れたホストタウン。その多摩市で開催された、アイスランドの文化や絵本に親しむイベントを通して、翻訳者・朱位昌併さんが紹介するアイスランドの絵本の魅力に惹かれていきました。
そして、朱位さんがアイスランドからもってきた原書の中に、この一冊がありました。
「この時はまだ「女性の休日」のことを知らず、また、アイスランド語も読めなかったのですが、手に取ってから3秒くらいで、“この絵本を出版したい!”と決意しました。ひとめぼれですね。」と当時を振り返る前田さん。文字は読めなくてもやわらかな絵やイラストから伝わるメッセージ。一目で惹かれて翻訳出版をきめました。
「はじめて手にした時は、私にとって“アイスランドを知る絵本”として楽しむ絵本の一つでしたが、英語版を取り寄せて出版の準備をしていく中で、「女性の休日」についてのことを更に知り、理解が深まりました。」

「女性の休日」というアイスランドの女性の歴史。調べていくと2025年10月24日が「女性の休日」の50周年であることを知って、慌てて出版することに。
更に後になって映画『女性の休日』の公開の予定についても知り、これまた慌てて広報協力の準備をすすめていったのだそうです。
映画と絵本のコラボレーションもインパクトがあり、最初に3000部、重版が決まって2000部の出版となりました。
絵本を出版してから、色々な人と一緒に読んだり、感想をもらったり、小さな子どもたちが気付いて教えてくれたり…ということを経て、理解が深まっていったそうです。
「誰かと読むことで絵本が育っていくような感覚があります」と前田さん。
描かれている絵をじっくり見ていくと、登場人物の顔の表情や、描かれている背景などから、ハッと気づけるものがたくさんあります。誰かと一緒に読んだり、感想をシェアすることで、一人では気づけなかった絵本の見方が広がり、その絵本の奥深さを伝えてくれます。

