胡散臭い上にかなりポンコツでツッコミどころ満載
舞台は終戦直後の混沌とした上海。強めの表情も間の抜けたテンポも豪華で猥雑かつレトロな雰囲気にマッチしていて、過剰には感じない。登場人物はどいつもこいつも後ろ暗いところがあるようで、胡散臭い上にかなりポンコツでツッコミどころ満載なのに、どこか憎めない愛嬌がある。コメディタッチの展開に気楽にクスクス笑っていたのにもかかわらず、後半驚きの真実が明らかになってからは、「これ、私の好きなやつじゃん!」と前のめりになって展開を追うようになった。
良心のある芸術家たちの叫びが聞こえる
芸術に、エンタメにできることなんてちっぽけだ。戦争は止められないし、人権侵害も、差別も、迫害も、こんなに物語の中で描かれているのに、依然として世の中がよくなる気配もない。むしろどんどん悪くなっていっている気すらする。それでも、黙って見ないふりなんてできない、という良心のある芸術家たちの叫びが聞こえるようなメッセージに、胸が熱くなった。これだから私は映画が好きなんだ。
『夜鶯 ―ある洋館での殺人事件―』
配給/AMGエンタテインメント ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中 © Shanghai Maoyan Pictures Co., Ltd.
<文/宇垣美里>
【宇垣美里】
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。

