大津絵とは?鬼や猫も描かれたゆる絵画の深い魅力と歴史、浮世絵との違いをやさしく解説

大津絵の解説記事01《鬼の念仏》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.

大津絵の特徴といえば、「これが芸術?」と首をかしげるくらいの「ゆるさ」 。「ヘタウマ」とも称される素人っぽい作風で美術界隈を賑わせる絵画ジャンルですが、最盛期には約120種類もの画題に発展し人気を博した伝統文化なんです。

この記事では、大津絵の歴史や代表的なモチーフを詳しく紹介します。同じく江戸時代に発達した浮世絵との違いも含め、大津絵を楽しく鑑賞する豆知識を増やしていきましょう。

大津絵とは何か?滋賀県を代表するユーモラスな文化

大津絵の解説記事02《猫と鼠》, Public domain, via Wikimedia Commons.

大津絵とは、江戸時代に近江(滋賀県)の大谷・追分あたりで描かれ始め、旅人にお土産として売られていた絵画です。上の《猫と鼠》のように、絵の意味や教訓を文章で説明する「道歌」が添えられる作品も多々あります。

「絵画」といっても身構えるような芸術ではなく、大量生産されたこともあって一般人にも手の届く気軽な絵画でした。今でたとえると、絶景の写真がプリントされた旅先で買えるポストカード…のようなイメージでしょうか。

大津絵の解説記事03《鬼の太鼓釣り》, Public domain, via Wikimedia Commons.

江戸では葛飾北斎や歌川広重をはじめとする人気絵師たちがしのぎを削っていた頃、大津絵は素朴であたたかみのある画風を受け継いでいきました。三味線を弾く鬼などの画題は現代の私たちから見てもユーモラスで、美術の知識の有無に関わらず楽しく鑑賞できるのも魅力ある特徴です。

大津絵の歴史をたどるー仏画から旅のお土産へ

大津絵の解説記事04《青面金剛》, Public domain, via Wikimedia Commons.

江戸時代初期、大津絵は阿弥陀如来や観音菩薩などを描く仏画として誕生しました。松尾芭蕉も「大津絵の筆のはじめは何仏」という句を残し、新年を迎えた大津絵師が始めて描くのはどの仏様か…と詠んでいます。

また、江戸幕府がキリシタン弾圧を始めると、キリシタンでないことの証にするため仏画の大津絵が求められるようになりました。後に画題が変化しても、大津絵の護符としての性格は受け継がれていきます。

大津絵の解説記事05《女虚無僧》, Public domain, via Wikimedia Commons.

その後、「藤娘」や「猫と鼠」など世俗的・戯画的な画題で描かれるようになり、大津絵は全盛期を迎えました。18世紀前半には約120種類の画題があったとか。江戸時代後期には旅ブームに乗じ、東海道を行き交う旅人のお土産としても人気となります。

明治時代に入って鉄道が開通すると、旅人が激減して大津絵も大きな打撃を受けることに。しかしその伝統は息絶えることなく、現在も数名の絵師たちが大津絵を支えています。

大津絵の解説記事06《鬼の三味線》, Public domain, via Wikimedia Commons.

なお、大正期には美術コレクターの間で大津絵ブームが起こりました。民藝運動をリードした柳宗悦も、大津絵を収集して研究。柳が設立した日本民藝館は現在、国内最大規模の大津絵コレクションを誇っています。

配信元: イロハニアート

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