胸郭出口症候群は首と胸の境界にある胸郭出口という部位が、腕を酷使することによって圧迫されてしまう病気です。
発症原因を理解して日常的に予防を行うことがおすすめです。
そこでこの記事では胸郭出口症候群の原因や症状をご紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「胸郭出口症候群」のストレッチ・チェック法はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
胸郭出口症候群の症状と原因

胸郭出口症候群はどんな病気ですか?
胸郭出口症候群は20代前後の女性に多く見られる病気で、首と胸をつなぐ「胸郭出口」という部位で血管や神経が圧迫されることで発症します。症状は多岐にわたりますが、一般的には肩と首を中心に痛みを伴います。
この病気は動脈閉塞を引き起こすことが多く、血行を改善することが治療の目的です。日々の生活習慣で慢性的に負荷がかかった状態が続くと発症しやすくなります。
胸郭出口症候群の症状を教えてください。
血管と神経が過度に圧迫されてしまうため、腕や肩がしびれたり、激しい痛みを伴ったりすることが一般的です。意図せずとも肩関節の可動域が狭くなり、筋力が低下することにより運動機能にも支障をきたすこともしばしばあります。その他には以下の指標となる症状があります。
手指の屈伸が継続できず、左右の握力に差異が生じる
不眠や倦怠感に襲われる
耳鳴りが頻繁に起こる
といった、日常生活に影響が出るものばかりです。力のかかり具合に違和感を覚えたり、今までできていた細かい作業ができなくなったりしたら胸郭出口症候群を疑ってください。
発症した場合はどのような痛みがありますか?
首・肩・腕に鈍い痛みを感じたり、指先がビリビリと痺れるような症状が現れます。
腕が腫れてしまったり、指の脱臼などの症状が見られた場合はかなり重症です。影響が出た部位によってはしこりができることがありますが、少しでも力が加わるとズキズキと響くような痛みに襲われます。
またこれらの痛みに限らず、腕から手にかけて冷えを感じることがあります。これは血流が妨げられている証拠であり、早急に解消しなければ血栓を生じ新たな障害を併発するリスクを高めるので危険な状態です。
胸郭出口症候群は何が原因で発症しますか?
根本的な発症原因は腕や肩に強い負荷をかけていることです。具体的には以下のようなケースが考えられます。
運動で肩を大きく回す動作や無理な筋トレで負荷をかけ過ぎている
重い荷物を運搬したり、持ち上げたりすることが多い
悪い姿勢でデスクワークを行い、肩や首の血流が鈍っている
これらの動作のときに痛みを感じるにも関わらず、長期間放置したままでいると次第に握力が低下していきます。
重症化するとどうなりますか?
どれほど安静な姿勢で過ごしていても常に痛みを感じるようになります。寝ていても患部の痛みが収まらず、ときに息苦しくなったら重症です。
そのまま進行した場合、圧迫された神経が修復不能となり、肋間神経損傷などの合併症を引き起こす可能性があります。また血液の流れが滞り血栓ができてしまうと、静脈うっ滞や静脈血栓症などのリスクも非常に高まります。
編集部まとめ

病名や症状を聞くと恐怖心を抱くかもしれませんが、日常に潜む根本の原因を冷静に解消していけば防げるものです。デスクワークや運動も過度にやりすぎることが禁物だと理解できたのではないでしょうか。
この記事を読まれた方は1日3分でも肩や首のマッサージを行い、正しい姿勢を意識する習慣を身に着けてみてはいかがでしょうか。痛みや冷えに悩まされない毎日を過ごしていきましょう。
参考文献
「胸郭出口症候群」|日本整形外科学会

