
2月24日に放送された「プロ野球 レジェン堂」(毎週火曜夜10:00-10:55、BSフジ)。前週に引き続き、1月20日に東京・有楽町のホール「I'M A SHOW(アイマショウ)」でおこなわれた番組初の公開収録イベントの模様を放送した。ゲストは「最強の1番打者」と呼ばれた元阪神タイガース・真弓明信と、「絶好調男」元読売ジャイアンツ・中畑清。MCの徳光和夫、遠藤玲子とともに、永遠のライバル球団で一時代を築いた2人が昭和プロ野球の裏側を余すことなく語り尽くした。
■ベストナインから一転トレードへ…真弓明信の意外な出発点
真弓と中畑が一軍に定着したのは1979年。同じ時代を駆け抜けた2人だが、真弓のキャリアには意外な一面がある。1978年はクラウンライターライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)で118試合に出場して打率.280をマーク、ベストナインにも選出されていた年。そんな絶好調の成績を残していたにもかかわらず、トレードで阪神へ移籍することになったのだ。
この経歴に徳光と中畑は驚きを隠せない。真弓は当時を振り返り、「“よっぽどクセがある”って言われていました」と苦笑交じりに明かした。
同じタイミングで巨人のエース・小林繁も阪神へ移籍。同期入団という縁もあり、真弓は小林と相部屋になったという。毎年2桁勝利を挙げていた小林の電撃移籍は当時大きな話題となり、この一連の出来事は後に「空白の1日」として語り継がれることとなる。
チームメイトでもあった中畑は、小林の無念さを間近で見ていた1人だ。だがトレード決定後の小林は悔しさを堪え、激しい感情を表に出すことはなかったという。中畑は「小林繁という漢を見ましたね」と当時を振り返った。
一方で阪神移籍後にマウンドへ上がった小林は闘志を前面に押し出し、特に巨人戦では鬼気迫る投球を披露。真弓も「全然違いましたよ、迫力が。絶対に打たせないっていう」と証言する。
■江川卓を打ち崩した真弓、江夏豊に封じられた中畑
必ずといっていいほど小林と並んで語られる存在が、昭和の怪物・江川卓だ。ホップするストレートとキレのあるカーブで三振の山を築いていた江川に対し、真弓は12本の本塁打、打率.287という好相性を誇っていた。
特に高めのストレートを打ち返すことが多かったといい、この日のステージ上では実際にバットを振りながらバッティングのコツを披露。現役時代と変わらぬ構えと鋭いスイングに、会場から大きな拍手が巻き起こる。
一方、真弓が対戦して“驚愕した投手”として挙げたのが江夏豊だ。「球は速くないんですけど、キレがあるボールでアウトコースの出し入れをやる」と、高度な投球術による駆け引きに注目。
たしかに中畑は江夏が対戦した13打席は、ノーヒットという結果で終えている。昭和のプロ野球ならではの江夏の豪快なエピソードを語り、「怖かった。風貌から態度からピッチャーじゃないでしょ」と圧倒されていたようだ。
もちろん見た目の威圧感だけでなく、「投球術はすごかった」と脱帽する。微妙なコースを繰り返し突き続けることで、際どい判定をする審判のストライクゾーンを自ら広げていくという高度なテクニックと名投手ならではの駆け引きがそこにはあった。
さらに話題は、昭和のプロ野球を語るうえで欠かせないレジェンド・王貞治へ。真弓は「記録が偉大なだけに近寄りがたい」と語り、現役時代から別格の存在だったと回顧。ところが中畑はこれに同意せず、「みんなそういうふうに言うけど、本当に話好きだよ」と意外な素顔を明かして会場を和ませる。
現役時代の中畑は三塁手であったため、一塁の王へ送球する場面が多かったという。中畑は「光栄なことですよ」と当時を振り返ったが、悪送球が原因で「一番ケガさせてはいけない人なんだけど、ケガさせました」と反省。後に中畑も一塁手として活躍したが、やはり悪送球が原因で王と同じケガを負うことになったそうだ。
スターたちの名勝負と人間味あふれるエピソードが交錯する、まさに昭和プロ野球の縮図のような時間だった。
■「宗教的な育て方ですね」公開収録ならではの温かな余韻
番組終盤には、公開収録ならではの“質問コーナー”も設けられた。この日寄せられたのは、ゲスト2人ではなくMCの遠藤に対する質問。「いつ頃から、どんなきっかけで巨人ファンになったのか知りたいです」と聞かれた遠藤は、恐縮した様子で「祖父母が後楽園球場のすぐそばに住んでいたので、生まれたときからジャイアンツの歓声を聞きながら育ってきた」と語る。
さらに、テレビの野球中継が終了する直前にはラジオを準備し、テレビ放送が終わると同時にラジオへ切り替えるという遠藤家の徹底ぶりも告白。熱烈な巨人ファンとして知られる徳光も、遠藤家の巨人愛には驚いたようだ。「宗教的な育て方ですね」と笑いを交えて応じると、会場は大きな拍手と笑いに包まれた。
今回の放送を通じて印象深かったのは、昭和という時代におけるプロ野球に対する熱量の凄まじさだ。記録や映像だけでは伝わらない当時のリアルな空気感を当事者の口から直接聞けること。それこそが「プロ野球 レジェン堂」の醍醐味であり、世代を超えて愛される理由なのだろう。

