銭湯の帰り道、牛乳じゃなくてコーヒーという選択肢があるまちが、ちょっと好きだ。
80年以上続く銭湯、第二寿湯の隣にある「第二寿湯 焙煎小屋」は、湯気の残る身体をそのまま連れて行ける場所。
扉を開けると、焙煎したての豆の匂いがふわっと広がる。ここは、先代が叶えたかった「お風呂あがりにコーヒーを飲む」という、ささやかで贅沢な夢の続き。
派手さはないけれど、暮らしのリズムにすっと馴染む一杯が、このまちの日常を少しだけやさしくしている。

銭湯のとなりで、時間が続いている

布施駅から北に歩いて7分ほど。第二寿湯は、このまちで80年以上湯を沸かし続けてきた銭湯。その隣にあるのが、「第二寿湯 焙煎小屋」。ぱっと見は、通り過ぎてしまいそうな佇まいの店だけれど、コーヒーの香りがふっと鼻をかすめて、足が止まる。

この店のはじまりは、店主のお父ちゃんが趣味で始めたコーヒー豆の焙煎だった。焙煎機は、当時使っていたものを今もそのまま使っている。年季の入った鉄の音、少し不揃いな温度感。それでも、この焙煎機でしか出せない味がある。
お父ちゃんの夢は、「風呂上がりにコーヒーを飲んでもらうこと」。でも、その景色を見る前に、お父ちゃんはこの世を去った。その夢の続きを引き受けたのが、娘さんだった。
ふたつのブレンドと、お父ちゃんの味

豆は全て自家焙煎で、コーヒーは2種類のみ。深煎りの《シルバーブレンド》と、浅煎りの《マイルドブレンド》。どちらも、「お父ちゃんの味」を再現しているという。
シルバーブレンドは、深みがありしっかり苦い。湯上がりの身体にすっと入って、背筋が少し伸びる感じがする。風呂あがりの火照った身体に、すっと入ってくるようなバランスを意識しているらしい。
値段は一杯400円。そして、銭湯の前後なら200円で飲める。
特別なことはしていないけれど、風呂とコーヒーが自然につながっている。それだけで、この場所に理由が生まれているように思える。
