「私、拓也が好きなの」
「もしもし?どうした?」
少しだけ胸がざわつく。電話の向こうで、里奈が息を吸う音がした。
「奈緒……あのね」
その声は、いつもより低いトーンだった。
「ちょっと、聞いてほしいことがあって」
いやな予感が、じわりと広がる。
「私──」
少しの間の沈黙が、とても長く、おもいものに感じられた。
そして──。
「私……拓也が好きなの」
友人の突然の告白に、頭がまっ白になる。
「……え?」
衝撃のあまり言葉が出ない。
「彼も私のこと好きみたいで……」
鼓動がドクンと大きく鳴る。昼間、公園でならんでいた2人の姿が、フラッシュバックする。笑い合う横顔、自然すぎる距離…あれは、ただの友だちじゃなかったの?
「でもっ、誤解してほしくないのは……まだ、何もないよ?」
里奈があわてたように付け加える。
「ただ……気持ちが止まらなくて……」
10年来の友情、それぞれの家庭、子どもたち──。
全部がぐらりとゆれる。私はスマホをにぎりしめたまま、言葉をうしなっていた。
あとがき:友情と恋の境界線
長い友情は、安心感と信頼を育てます。でも、その安心感が、ふとしたきっかけで“特別”な感情に変わることもあります。
家庭の悩みや孤独を分かち合ううちに、心の距離は縮まっていく。それ自体はわるいことではないはずなのに、立場や状況によっては、大きな波紋を呼びます。
「まだ一線は越えていない」。それでも、心がかたむいた瞬間から、関係は元には戻れないのかもしれません。この告白を受けた奈緒は、親友として何を選ぶのでしょうか。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

