
小学5年生のハルコは、家族の前では常に無邪気な笑顔を見せていた。しかし、小学1年生の弟フユタによる「お姉ちゃん、学校でやられてるんだって」という何気ない一言で事態は急転する。母親のナツミが下校後の公園を探しても娘の姿はなく、帰宅したハルコは「ずっと公園にいた」と嘘をついた。実は4年もの長きにわたり、彼女は教室で過酷ないじめの標的にされ続けていたのだ。




SNSで育児エッセイを公開している漫画家・さやけんさん(@saya_ken2)の作品『家族全員でいじめと戦うということ』が、子育て世代から強い反響を得ている。本作は知人の壮絶な実体験を基にしており、被害者家族は最終的に転校という苦渋の決断を下す。この漫画が特異なのは、被害者の母親だけでなく、加害者や傍観者など複数の視点から教室の闇を描き出している点だ。
さやけんさんは「真実とは、語る人間の立場や視点によって全く別の顔を見せるもの」と語る。表面的な出来事だけで善悪を判断するのは危険であり、親が感情のままに動けば一番守るべき子どもをさらに追い詰める結果になりかねないという。作者は読者に、教室内における複雑な人間関係の疑似体験を望んでいる。傷ついた子どもにとって、見て見ぬふりをする同級生や教師は加害者と同義だ。愛情深く育てた我が子であっても、集団心理に飲み込まれて加害側に回る危険性は常に潜んでいる。
連載には「親に言えなかった」「今も傷が癒えない」という読者からの悲痛な声が多く届く。これに対し、さやけんさんはあえて結末がハッピーエンドであることを事前に明かしている。モデルとなった少女は4年間の苦境を乗り越え、現在は穏やかな日々を送っている。この事実が、過去の傷に苦しむ人への救いになればという作者の配慮だ。
タイトルにある「家族全員で戦う」という言葉は、被害者家族の結束のみならず、加害者側の家族が抱える葛藤という意味も含まれている。関係する親や子どもたちの選択が正解だったのかは誰にもわからない。ただ、もがき苦しんだ末に少女が笑顔を取り戻したことだけは紛れもない事実である。我が子が当事者になったとき、親はどう動くべきか。教室の残酷な現実から目を背けず、家族で考えるきっかけにしてほしい。
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