エジプト文字はアルファベットの原型!?映画『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』

映画『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』(2015)

参照:映画『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』

夜になると博物館の展示物たちが動き出す。そんな奇想天外なアドベンチャー映画が『ナイト ミュージアム』シリーズです。『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』では、シリーズの重要アイテムである石板に異変が起こり、緑青(ろくしょう)のような錆に覆われはじめたことで、展示物たちが暴走し、魔力が失われそうになるという危機が訪れます。

主人公の夜間警備員ラリーは、石板の魔力を取り戻すため、仲間たちを連れて大英博物館へと向かいます。そこには、石板の秘密を知る、マレンカレ王とシェップスハレット王妃が眠っているからです。石板の真実と、そこに秘められた家族愛に、わたしは思わず心を掴まれてしまいました。

黄金の石板は3×3のマス目に区切られ、鳥や人の形をした文字が刻まれています。これが古代エジプトで用いられたエジプト文字の1つ、「ヒエログリフ(聖刻文字、神聖文字)」です。長い歴史を通じて数多くの学者が解読に挑んだ、まさに魔法のように謎めいた存在は、一体どんなものだったのでしょうか?

エジプト文字とは?3つの種類と特徴

『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』でも鍵を握る古代エジプト文字。そもそも古代エジプト文明には3種類のエジプト文字が存在していたことを知っていましたか?

①ヒエログリフ(聖刻文字、神聖文字)

ヒエログリフは音、物、概念を表す象形文字(物の形を線や点で写し取って作られた文字)です。文字が音と意味の両方を示し、約800文字から成ります。墓や記念建造物、宗教的な文書に用いられました。紀元前3200年ごろに誕生したとされますが、ほかの文明では採用されず、後にエジプトに侵入するギリシア人やローマ人が学んだ記録もありません。

セティ1世の墓から出土した壁の断片(ヒエログリフ)/大英博物館セティ1世の墓から出土した壁の断片(ヒエログリフ)/大英博物館, Public domain, via Wikimedia Commons.

※セティ1世:各地の神殿を復興し、シリアなどへの軍事遠征を盛んに実行した。紀元前1294年または1290年ごろ〜紀元前1279年に在位したと考えられている。

紀元後4世紀ごろまでは読み手がいたと考えられていますが、その後、読み方は忘れ去られていたそうです。しかし1822年、フランス人エジプト学者のジャン=フランソワ・シャンポリオンがロゼッタ・ストーンの解読に成功し、再びわたしたちはヒエログリフを読めるようになりました。

②ヒエラティック(神官文字)

ヒエラティックはヒエログリフの筆記体で、行政や宗教の文書など、主に書記による文書で使用されました。「ナカダ3期」と呼ばれる、エジプト原王朝時代(紀元前3200年〜紀元前3000年ごろ)に初めて用いられ、ヒエログリフと並行して発達したようです。

「プリス・パピルス」の一部(紀元前1991年ごろ〜紀元前1782年ごろ)/フランス国立図書館「プリス・パピルス」の一部(紀元前1991年ごろ〜紀元前1782年ごろ)/フランス国立図書館, Public domain, via Wikimedia Commons.

※プリス・パピルス:エジプト中王国時代の第12王朝のパピルスで、フランス人オリエント研究家、エミル・プリス・ダヴェンヌによって発見された。

ヒエラティックという名前ですが、これは初期キリスト教を代表する神学者、アレクサンドリアのクレメンス(ティトゥス・フラウィウス・クレメンス)が、紀元2世紀に初めて用いたものでした。ヒエラティックが宗教的シーンでだけ使われていたためで、実際に紀元前660年以降、世俗的な書き物ではデモティックが使われていたと考えられています。

③デモティック(民衆文字)

デモティックはヒエラティックをさらに簡略化した文字で、民衆が使う主要な文字として普及しました。紀元前650年〜紀元後5世紀ごろ、商業文書と法律文書に用いられましたが、4世紀にはエジプトでギリシア文字に基づいたコプト文字の使用が始まり、デモティックは使われなくなりました。

マクデブルク(ドイツ)に展示されている、ロゼッタストーンの複製品に刻まれたデモティックマクデブルク(ドイツ)に展示されている、ロゼッタストーンの複製品に刻まれたデモティック, Public domain, via Wikimedia Commons.

エジプト第26王朝の初代ファラオ、プサムテク1世がエジプトを再統一した後、上エジプト(南部)では、ヒエラティックの後継として、デモティックが公式の行政文書・法律文書に用いられました。デモティックは行政文書、法律文書、商業文書に、ヒエログリフとヒエラティックは宗教文書や文学にと、用途が区分されていたそうです。

配信元: イロハニアート

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