「同じ市区町村にある」などの理由で複数の介護事業所が連絡会などを結成し、勉強会や研修会、イベントなどを共同開催するといったケースは全国各地でみられます。
しかし、長年にわたり活発に活動している団体・グループがある一方で、数回程度の活動で自然消滅してしまうケースも少なくありません。
同じような介護事業所が同じような想いや目的を持って始めた活動なのに、なぜこうした違いが出るのでしょうか。
今回は、実際に活発に活動している介護事業者の集まりに「長続きするポイント」を聞いてきました。

初めに認識しておくべき点は「参加する介護事業所は、普段は互いにライバル関係にある」ということです。
中には「施設長・管理者をヘッドハンティングされた」「入居検討者を奪われた」などで遺恨を持っているケースも少なくありません。
そして会員対象の介護事業所の活動エリアやサービス種別が限定されるほど、日常では強いライバル関係にある事業所が密な形で活動する可能性が高くなります。
「あそことは一緒にやりたくない」「うちの会社のノウハウが盗まれる」などの理由で活動に非協力的だったり、活動の中で仲違いをしてしまったりするケースも少なくありません。
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こうした事態を避けるには「ライバル関係を乗り越えてまで解決すべき課題や、達成しなくてはいけない目標を組織としてしっかりと認識する」ことが大切です。
例えば、仮にライバルの事業所に施設長を引き抜かれたとします。
しかし社内に次の施設長にふさわしい力量を持った人材が何人もいればそれほど大きなダメージにはなりません。
複数の介護事業者が共同で活動すれば、事業者単体では難しい質の高い勉強会や研修会を行うことが可能になり、そうした優れた人材を育成できるかもしれません。
そうであれば多少の遺恨があっても活動に参加する意味があるといえるでしょう。
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ですから大事なのは「介護サービスの品質向上」「業界全体のイメージアップ」「行政など業界外とのパイプ作り」などのさまざまな目的の中から、自分たちが第一に目指すことを決め「このためには、日頃の多少のいざこざや遺恨を乗り越えて一致団結しよう」という意識を持たせることです。
この軸がぶれてしまうと活動は継続しません。

また、日頃はライバル関係にある事業者を一つにするには、強いリーダーシップを持った人がとりまとめ役になることが重要です。
現在、全国に支部を持つ介護事業者の団体が、新たに地方支部を立ち上げるときに重視したのが「誰に支部長になってもらうのか」という点でした。
仮にその地域で高い知名度やシェアを持っている介護事業者の経営者であっても、肩書を欲したがるなどの名誉欲が強すぎたり、「あの会社とは一緒に活動したくない」などの個人的な部分の要求が強い人だったりすると、結果的に組織を壊すことにもなりかねません。
会員間の意見調整などがしっかり行え「あの人が言うなら協力しよう」と誰もが思えるようなクセのない人物の方が、こうした組織のトップに向いているとも言えます。
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また、経営者層ではなく、施設長や管理者・現場のスタッフたちがそれぞれの会社を代表する形で参画・運営している組織もあります。
この場合には、退職や人事異動により参画できなくなるメンバーが出てくる可能性も考慮しなくてはなりません。
例えば、定例研修会の外部講師の選定を特定のメンバーの情報や人脈に依存していると、そのメンバーが参画できなくなった場合に困ります。
勉強会・研修会、総会、その他イベントなどの企画・運営ノウハウは属人化させるのでなく、組織全体の財産としていくことを日頃から心がけなくてはいけません。
介護の三ツ星コンシェルジュ


