小学館が運営する漫画アプリ「マンガワン」に配信されていた作品の原作者をめぐり、批判が高まっている。
小学館などによると、連載作品『常人仮面』の原作者「一路一」氏は、過去に『堕天作戦』を執筆していた山本章一氏と同一人物で、2020年に逮捕され罰金刑が確定した。これを受け、『堕天作戦』の連載は中止された。
しかし、マンガワン編集部は2022年、新たに『常人仮面』の連載を開始。今回の問題が明るみになった後、「原作者として起用すべきではありませんでした」と謝罪し、配信や単行本の出荷停止を発表した。
さらに、山本氏と被害者との間で進められていた民事訴訟の和解協議に編集者が関与していたことも判明。「事案の重大性に対する認識および情報把握が十分であったとは言えず、不適切な対応でした」として、重ねて謝罪する事態になっている。
山本氏の再起用について、小学館がどの程度の情報を把握し、どのような判断過程を経たのか、現時点では明らかになっていない。では、一般に刑事罰を受けた人物を起用することに法的な問題はあるのか。また、なぜここまで批判が強まっているのか。
マンガやアニメなどの知的財産権にくわしい舟橋和宏弁護士に聞いた。
●違法ではないが、ガバナンスの問題になりうる
──過去に事件を起こし、刑事罰を受けた人を漫画の作者として起用することに問題はありますか。
執筆者が刑罰を受けたという理由だけで、出版社が原作者などとして起用すること自体が違法になるわけではありません。ペンネームを変えることも同様です。
ただし、2020年に策定・公表された「『ビジネスと人権』に関する行動指針」などを背景に、企業には人権尊重の姿勢が強く求められています。企業の判断に対しては、法的責任とは別に、社会的な批判が向けられる可能性があります。
報道によると、今回のケースでは、前作の掲載終了から2カ月後に別のペンネームで新連載が始まったとされています。
社内で十分な情報確認や検討がなされたのか、そのうえでの判断だったのかが問われます。適切なプロセスを経ていなかったとすれば、ガバナンスの問題になると考えます。
●批判が強まった背景「性犯罪だった」
──なぜ批判の声が高まっているのでしょうか。
一つには、問われたのが性犯罪だった点が大きいでしょう。
たとえば、薬物事犯はゲートウェイドラッグなども含めて、他の犯罪の温床となる側面があるといえ、極端に言えば、自己のみを傷つける犯罪と理解される余地があります。
しかし、性犯罪には明確に被害者が存在します。近年の性的姿態等撮影罪の創設や、不同意性交等罪への改正など、厳罰化が進んでおり、社会全体として加害行為に対する強い非難が向けられる傾向があります。
そのため、過去に性犯罪で有罪となった人物の再起用については、より強い反発が生じやすいと考えられます。
実際、同じタイミングで、過去に執行猶予付き有罪判決を受けた執筆者が別のペンネームで活動していたことが公表された件でも、賛否を含むさまざまな意見が出ています。

