いつも美味だけど水温が下がり切るころが一番うまい……熱烈なタチウオファンからそう聞いたことがある。
東京湾は今まさにその時期、極上の一本をぜひ釣って食べてみたいところだ。
メインポイントは猿島沖の水深60m付近。
東京湾奥小柴・三喜丸の齋田正道船長によると年始の数釣りモードは一休止して型狙いのシーズンとのことで、取材日もポツリポツリの拾い釣り。
しかし潮が効き始めると107cmを筆頭に100cmオーバーが連発してヒートアップ、頭で10本を超えた。
三喜丸のタチウオ船は後方でエサ釣り、前方でルアー釣りが楽しめる。
好みの釣り方で小悪魔的なタチウオとの攻防にしびれ、竿全体を引きずり込むようなパワーに酔いしれ、夕げはおいしいアフターを過ごしてほしい。

「脂乗り乗り」と船長も太鼓判のうまさ
年末年始にSNSにアクセスすると、大型クーラーに敷き詰められた銀の絨毯のようなタチウオ大漁の投稿を頻繁に目にした。
かつては冬の水温低下に比例して深場へ消えていったものだが、近年は様子が一変しているらしい。

相変わらずのタチウオ船団。高位安定の人気ぶりだ
深場に落ちないタチウオ
そんなタチウオに興味がありつつもなぜか縁が遠くなっていた私に、取材釣行の幸運が訪れた。
向かう先は八景島シーパラダイスのすぐ隣、東京湾奥小柴の三喜丸だ。
船のタチウオ釣りはテンビン仕掛けのエサ釣り、ゲーム性の高いルアージギング、そして最近急激に存在感を増したテンヤタチウオがある。
同じターゲットに数種の釣法が存在するのは人気の高さの証ともいえるだろう。
三喜丸は釣り座を分けることですべての釣法を楽しむことができ、今回私はテンビン仕掛けのエサ釣りを希望。
釣行した2月9日はテンビン派の4名がトモ側に入り、それより前方に並ぶ10名は全員ジギングという布陣となった。
舵をとる齋田正道船長に最新の釣況をうかがうと、「年末年始の数釣り爆釣モードは一段落したものの、依然としてトップ20本前後の釣果。しかもサイズを狙える時期になってきましたよ。テンビンのエサ釣りはアタリも多いから楽しめるんじゃないかな」
大いなる期待を胸に、7時過ぎに舫が解かれて連日好釣果が続く猿島沖へ。
冬期は湾口の深場という昔のイメージが強かったので、この時期に近場の猿島沖とは珍しいのでは?と質問をぶつけると、「近年は東京湾内も水温が高い状態が続いていて、このあたりで周年狙えるようになったんです。連日水深60m前後で濃い反応がありますよ」とのこと。
30分弱でポイントへ着くとすでに多くの船。
齋田船長も船を回してタチウオを探し、水深65mでスタート。
「はい、50~55mを探ってみて!」
この日を占う第1投、いきなり左舷ミヨシ山野さんのジギングロッドが弧を描く。
色めき立つも妙に重い引きは本命ではなく、残念ながら1m級のサメ。
その後も魚探には色濃く反応は映るのに、潮が効かないせいかタチウオが口を使わない。
最初の本命が顔を出したのは開始から30分後。
紅一点の齋藤さんがボトム付近を5m幅で入念にジギングを繰り返し、レディファーストと言わんばかりに中型のタチウオを取り込む。
しかしその後もペースは上がらない。
船長もたまらず、「これ見てよ!これだけ反応出てても食わないんだよ」
魚探を覗くとなるほど凄まじく真っ赤な反応。
よーし食わせてみせようと、ここで私も竿を出す。
指示ダナ下限から誘いを開始、水平位置までロッドを上げつつリール半回転のピッチで誘い上げる。
しかし皆さんと同様アタリがない。
ミヨシで掛けたとの船長の声に、52mの位置で仕掛けを止めたまま竿を置いて撮影に向かう。
ほどなく自分の席に戻って竿を手に取ろうとしたとき、小さくカツッ。
あれ?置き竿でアタリ?
1mほど仕掛けを落としてもう一回誘おうとするとまたカツッ。
思い切って合わせを入れると、底へと引きずり込むようなタチウオ特有の引き。
上がってきたのは小型ながら、待望のタチウオだった。
棚からぼた餅の1本だけに喜びは微妙。
とはいえタチウオ釣りの一番の肝は、その日のヒットパターンを探し出すこと。
日により時間により変わるテクニカルさが、ハマる釣りとされる所以なのだ。

緩急の誘いを駆使してうまく掛けたい
知っ得!エサを目前に見せつける
タチウオは背ビレをクネクネさせながら泳ぎ、海中で立つような姿勢をキープしつつ目の前を通過する獲物を待ち構えて下から食いつく。
釣り方のコツは、指示ダナの範囲をまめに誘い上げること。
エサを見せつけるように通過させてアピールする。
ヒットするタナが見つかっても、少し下から誘い上げたほうが効果的だ。
ただし釣行日のような低活性時は、ほぼ同じタナに仕掛けを置いて小さく誘ったほうがヒットしやすいこともあるから、なんとも難しく奥が深い。

当日はチョコンと動かしてステイの誘いがハマった

