放射線治療は多くのがん種に対して有効な選択肢となっています。脳腫瘍や肺がん、乳がん、前立腺がんなど、発生部位や進行度に応じてさまざまな役割を果たします。本記事では、頭頸部・胸部・腹部・骨盤部のがんに対する放射線治療の適用例や、骨転移・脳転移などへの対応について解説します。また、治療中に避けるべき刺激物や硬い食品、推奨される柔らかく消化の良い食事についてもご紹介します。さらに、過去の照射歴や妊娠など、治療が難しい条件についても触れ、適応判断の過程を理解しましょう。

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
滋賀医科大学医学部卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科
放射線治療で対応できるがんの種類
放射線治療は多くのがん種に対して有効な治療法の一つです。がんの種類や進行度、発生部位によって、根治を目指す治療から症状緩和を目的とする治療まで、さまざまな役割を果たします。
頭頸部と胸部のがん
脳腫瘍に対しては放射線治療が重要な治療選択肢となります。手術が難しい部位の腫瘍や、術後の再発予防のために照射が行われます。定位放射線治療により、正常脳組織への影響を抑えながら腫瘍に高線量を集中させることが可能です。転移性脳腫瘍に対しても効果が期待できる場合があります。
頭頸部がん(喉頭がん、咽頭がん、口腔がん、舌がん、上顎洞がんなど)では、臓器機能を温存しながら治療できる点で放射線治療が選ばれることが多くあります。発声や嚥下といった重要な機能を保ちながら、がんを制御することを目指します。化学療法との併用により効果を高める治療戦略もとられます。
肺がんでは早期の非小細胞肺がんに対して定位放射線治療が行われ、良好な治療成績が報告されています。手術が困難な方や手術を希望されない方の選択肢となります。進行肺がんでは化学療法と組み合わせた放射線治療が標準的な治療法の一つとして位置づけられています。
食道がんのうち、主に扁平上皮がんの一部の進行例では、化学療法と放射線治療を同時に行う化学放射線療法が、手術と同等の治療成績を示す場合があると報告されています。患者さんの全身状態や希望に応じて、手術か化学放射線療法かを選択することになります。術後の再発予防目的でも照射が検討されることがあります。
腹部・骨盤部と血液のがん
乳がんでは乳房温存手術後の局所再発を予防するために術後照射が標準治療となっています。乳房全体に照射を行い、必要に応じて腫瘍があった部位に追加照射(ブースト照射)を行います。リンパ節転移がある場合にはリンパ節領域への照射も検討されます。
前立腺がんは放射線治療の良い適応となるがんの一つです。外部照射や密封小線源治療(組織内照射)により、手術と同等の治療効果が期待できる場合があります。高齢の方や合併症のある方でも比較的受けやすい治療とされています。性機能や排尿機能への影響は、個々の状況により異なります。
子宮頸がんでは進行度に応じて手術か放射線治療が選択されます。放射線治療では外部照射と腔内照射を組み合わせることで、腫瘍に高線量を集中させながら周囲の正常組織への影響を抑えます。化学療法との併用により効果を高める治療が標準的です。
直腸がんでは術前に放射線治療を行うことで腫瘍を縮小させ、手術での切除をしやすくする戦略がとられることがあります。術後の局所再発リスクが高い場合には術後照射も検討されます。肛門管がんでは化学放射線療法により肛門を温存できる可能性があります。
悪性リンパ腫では化学療法が主体となりますが、病変部位への放射線治療を併用することで治療効果を高めることができる場合があります。特に限局期のホジキンリンパ腫では化学療法と放射線治療の組み合わせが標準治療です。症状緩和目的でも有効に用いられることがあります。
転移や再発に対する放射線治療
放射線治療はがんの転移や再発に対しても重要な役割を果たします。根治を目指す場合もあれば、症状を和らげて生活の質を保つことを目的とする緩和照射もあり、患者さんの状況に応じた治療が選択されます。
骨転移と脳転移への対応
骨転移による痛みは放射線治療で改善が期待できる症状の一つです。照射により腫瘍の活動が抑えられ、痛みの軽減が期待されます。骨折リスクの低下が期待できる場合もありますが、状況により整形外科的治療が必要となることもあります。多くの場合、数回から10回程度の外来照射で効果が得られます。痛みが完全になくなる方もいれば、痛み止めの使用量が減る方もいます。
脊椎転移では腫瘍が脊髄を圧迫して麻痺が生じるリスクがあります。緊急的に放射線治療を行うことで神経症状の進行を防いだり、改善させたりすることができる場合があります。早期の対応が重要なので、下肢のしびれや脱力、排尿障害などの症状が現れた際には速やかに受診する必要があります。
脳転移に対しては全脳照射や定位放射線治療が選択されます。転移巣が少数で小さい場合には定位放射線治療により、認知機能への影響を抑えながら高い局所制御が期待できることがあります。転移巣が多数ある場合や、髄膜播種がある場合には全脳照射が検討されます。
これらの転移に対する治療は症状の緩和だけでなく、生存期間の延長にも寄与することが報告されています。薬物療法と組み合わせることで相乗効果が得られる場合もあります。ただし効果には個人差があり、腫瘍の種類や全身状態によって結果が異なることがあります。
局所再発への治療戦略
がんの治療後に元の部位やその近くで再発が見つかった場合、放射線治療が選択肢となることがあります。以前に同じ部位に照射を受けていない場合には、初回治療と同様の線量を照射できる可能性があります。手術や薬物療法と組み合わせることもあります。
過去に放射線治療を受けた部位に再び照射する再照射は、正常組織がすでに一定の線量を受けているため慎重な判断が必要です。それでも技術の進歩により、高精度な照射方法を用いることで再照射が可能となるケースが増えています。期待される効果と副作用のリスクを十分に検討したうえで決定されます。
局所再発の治療では根治を目指せる場合と、症状のコントロールを主目的とする場合があります。腫瘍の大きさや広がり、患者さんの全身状態、ほかの治療選択肢との比較などを総合的に評価して治療方針が決められます。
再発がんに対する放射線治療では、より精密な照射技術が用いられることが多くあります。強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導放射線治療(IGRT)により、腫瘍の形状に合わせて線量を集中させ、周囲の正常組織への影響を最小限に抑える工夫がなされています。

