3月5日に開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、大谷翔平選手など、日本代表「侍ジャパン」の活躍に期待が高まっている。
居酒屋やスポーツバーが店内モニターで試合を流し、客と一体になって盛り上がる「パブリックビューイング」はスポーツイベントの醍醐味の一つだろう。
しかし、今回はそうした観戦スタイルが難しくなる可能性がある。
というのも、今大会は地上波テレビでの中継がなく、配信を独占するNetflixと契約しなければ視聴できないためだ。野球ファンが集まる飲食店では、パブリックビューイングを断念する動きも出ているようだ。
では、個人契約のアカウントを使って店内でパブリックビューイングをした場合、法的にはどんな問題が生じるのか。もし「無断パブリックビューイング」が発覚した場合、飲食店側はどの程度の賠償を求められる可能性があるのか。著作権法にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。
●テレビで放送されているスポーツ中継を流すのは著作権侵害?
──そもそも居酒屋やスポーツバーなどの飲食店で、テレビで放送されているスポーツ中継を流す行為は法的に問題なのでしょうか。
一般的にスポーツ中継の番組は「著作物」だと考えられます。そのため、飲食店がテレビを設置して、不特定多数の来店客に視聴させることは、一見、著作権(伝達権)の侵害になってしまいそうです。
しかし、放送されている番組については、著作権法に特別の規定があり、「家庭用受信装置」を用いて放送を受信して公衆に伝達する場合には、営利・非営利問わず、適法とされています(著作権法38条3項)。
「家庭用受信装置」とは、要は、家庭用のテレビのことですが、具体的な大きさなどについて著作権法に規定はありません。1970年の制定当時は、昭和時代の小さなブラウン管テレビが想定されていたと考えられますが、令和の現代では家庭用テレビも大型化しています。
そのため、入場料を徴収して、大型のテレビでパブリックビューイングを開催することも適法だという説明がされてきました。
ただし、これはあくまで、テレビをつけたら放送されている番組をそのままリアルタイムに視聴させる場合の話です。録画したテレビ番組や、Netflixのようなインターネット配信の番組を視聴させる場合は、この著作権法38条3項の対象外です。
●Netflixでのパブリックビューイングは可能か?
──Netflixの個人向けサブスクリプションを利用し、飲食店でWBCをパブリックビューイングした場合はどうなりますか。
この場合、今説明した著作権法38条3項は適用されません。ですので、利用者は、契約で許諾されている範囲でNetflixのコンテンツを利用することができる一方で、その範囲を超えて利用すると著作権侵害となってしまいます。
つまり、問題は、Netflixがどの範囲で利用を許諾しているかということになります。
Netflixの利用規約によると、Netflixの番組コンテンツの利用は「個人的な非商業的用途に限る」とされており、飲食店でのパブリックビューイングを想定したプランは用意されていないようです。
そのため、個人契約アカウントを用いてパブリックビューイングをおこなえば、規約違反にとどまらず、著作権侵害となる可能性が高いと思います。

