「空咳」が続く・空咳が止まらない原因はご存知ですか?【医師解説】

「空咳」が続く・空咳が止まらない原因はご存知ですか?【医師解説】

空咳(からせき)が出る時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?メディカルドック監修医が解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

※この記事はメディカルドックにて『「空咳」が続く・空咳が止まらない原因はご存知ですか?医師が対処法も徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

中村 雅将

監修医師:
中村 雅将(医師)

弘前大学医学部卒業。弘前大学大学院医学研究科卒業。腎臓専門医・透析専門医・内科専門医として弘前大学、徳島大学、社会医療法人川島会川島病院、医療法人清永会矢吹病院などで臨床経験を積み、現在は医療法人さくらさくら記念病院に副院長として勤務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本腎臓学会専門医・指導医、日本透析医学会専門医・指導医の資格を有する。

「空咳(からせき)」で考えられる原因と対処法

空咳(からせき)とは、医学用語では乾性咳嗽(かんせいがいそう)と称されます。痰(たん)を伴わない乾いた咳をさします。喉や気管支など気道が刺激を受けたり、炎症が起こったりすることで発生します。

空咳で考えられる原因と対処法

空咳は、さまざまな原因で発生します。症状や背景に応じて対処法が異なるため、正確な診断と適切な対応が重要です。
湿った「ゴホゴホ」という咳と異なり、「ケホケホ」「コンコン」といった乾いた咳が断続的に出ます。喉の違和感を伴うことがありますが、痰や喉の詰まりは感じられません。風邪などの他の症状を伴わない場合もあります。長期間続く場合もあり、特に夜間や早朝に悪化することが多いです。
空咳を落ち着かせるには冷たい空気やタバコの煙、香水などの刺激を避けるようにしましょう。部屋を換気して清潔に保ち、加湿器を使用するなどして部屋の湿度を50~60%程度に保つとよいでしょう。環境の整備が大事です。こまめに水やぬるま湯を飲むなどして喉の潤いを保つことも有効です。
空咳が出るときに考えられる病気は多岐にわたりますが代表的なものは以下のように列挙されます。
・風邪やウイルス感染
初期症状として咳が現れます。
・アレルギー性咳嗽
ハウスダストや花粉が原因となります。
・喘息
喘鳴を伴わない場合でも、夜間悪化する空咳が特徴的。
・逆流性食道炎
胃酸の逆流が喉を刺激して咳を引き起こします。
・心因性咳嗽
ストレスや緊張が原因で咳がでることがあります。
・後鼻漏症候群
鼻水が喉に流れ込むことが刺激となり咳がでます。
・薬剤性咳嗽
特にACE阻害薬などの副作用。

空咳が出ている場合。息苦しさや胸の痛みを伴う場合やチアノーゼ(唇や手足の先端が青紫色になる)がみられる場合には緊急性が高い状態と考えられます。至急、総合病院の救急外来や呼吸器内科を受診しましょう。
空咳が長期間(2~3週間以上)続き、原因が不明な場合には一般内科や呼吸器内科を受診します。空咳の原因によってはアレルギー科や耳鼻咽喉科などに紹介してもらうことになります。

【子供】空咳で考えられる原因と対処法

子供の空咳は短期間であれば、風邪や一時的な刺激によるものが多く、喉の違和感を訴える場合もあります。夜間や運動後に症状が悪化することもあります。
大人と同様に加湿器などを用いて室内の湿度を保つことや、たばこの煙や冷たい空気を避けるといった対策を講じます。ぬるま湯などで喉を潤しつつ、リラックスを促すのも良いでしょう。
子供の場合も風邪やウイルス感染では喉の炎症が原因となり空咳を引き起こします。アレルギー性咳嗽はペットやハウスダスト、花粉などが引き金となります。喘息では運動後や夜間に悪化しやすい傾向があります。
子供の咳嗽では異物誤飲の可能性も念頭に入れておく必要があります。喉や気道に異物が入っていないか確認しましょう。百日咳による空咳は激しい咳が特徴で、防接種未接種の場合は特に注意が必要です。
子供の空咳では、咳が数日続く場合や原因がよく分からない場合には最寄りの小児科をまず受診しましょう。大人も子供も、咳の頻度や時間帯、誘因などの情報があると医師の診断がスムーズになります。受診する前に咳がでるようになってからの経過を簡単にメモ書きして持参すると良いでしょう。

空咳が続く・空咳が止まらない原因と対処法

空咳が出る際に、自身でできる対処法は前述のとおりですが、それでも空咳が続く場合、いろいろな疾患の可能性を考慮する必要があります。以下で具体的な疾患について説明します。

・咳喘息
ゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)がないことも多く夜間や早朝に空咳が出やすい特徴があります。
・気管支炎
風邪やウイルス感染の後に咳の症状が現れます。初期は乾いた咳が多いですが痰が絡んだ咳に変化することが多く、激しく咳込むようになります。
・間質性肺炎
膠原病などの自己免疫性疾患を併発していることもあります。病気が進行すると息苦しさを伴うことがあり、咳が長引く場合がある。
・百日咳
特徴的な連続する咳(犬吠様の咳と形容されます)が長期間続きます。
・新型コロナウイルス(covid-19)感染症
空咳が主症状で、熱や倦怠感などを伴うこともあります。
・胃食道逆流症(GERD)
胃酸の逆流によって喉が刺激され、特に横になると咳が出ます。
・アレルギー性鼻炎
鼻水が喉に流れ込む(後鼻漏)ことで咳が出ます。
・刺激物
タバコの煙や化学物質が原因になって咳がでます。
・薬剤性咳嗽
ACE阻害薬(高血圧の薬)などが原因で空咳がでることがあります。
・心理的要因
ストレスや緊張で無意識に咳が出る場合もあります。

空咳がつづく原因は多岐にわたります。空咳が続く場合には、一般内科や呼吸器内科をまず受診し、原因を特定したうえで治療をうけることになります。

空咳が咳に変わる原因と対処法

痰がでない空咳から、痰を伴った咳(湿性咳嗽)へと移行してきたときには、痰を出しやすくする工夫として、温かい飲み物を飲んだり、市販の去痰剤を使用することも有効です。痰や咳は体が病原体を体外に排出するための反応でもありますので無理に症状を抑え込むのではなく、痰を出しやすくする対策をとるのが良いでしょう。
空咳から湿性咳嗽に変わる原因を以下に列挙します。
・風邪・ウイルス感染
初期には喉の炎症による乾性咳嗽が中心ですが進行すると分泌物が増え、湿性咳嗽に変化していきます。
・気管支炎
細菌やウイルス感染が原因ですが病状が進行すると痰が増え、咳が長引くことが特徴です。
・肺炎
痰の量が多く、高熱や息苦しさを伴うようになります。
・喘息
咳が中心ですが、感染を併発すると痰を伴う咳が混じることもあります。
・副鼻腔炎(後鼻漏)
鼻から喉へ粘液が流れ込むことで湿性咳嗽が生じます。
・胃食道逆流症
胃酸の逆流が続くと胃酸が喉を刺激し、空咳が悪化します。慢性的な咳に湿性の症状が加わることもあります。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
長期間の喫煙や環境要因で湿性咳嗽が見られます。

長引く空咳で医療機関を受診する際、どういった診療科を受診すればよいでしょうか。目安になる症状によって分類してみます。

内科:風邪、気管支炎などの一般的な病気が疑われる場合。
呼吸器内科:咳が2週間以上続く、痰がひどい、息苦しい場合。
耳鼻咽喉科:後鼻漏や副鼻腔炎が疑われる場合。
消化器内科:胃食道逆流症の可能性がある場合。

すぐに病院へ行くべき「空咳」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

呼吸困難や痰の異常がみられる場合は、呼吸器科へ

・ 呼吸に異常がある場合
息苦しさや呼吸困難を感じる。呼吸をすると胸が痛む、またはヒューヒュー・ゼーゼーと音がする(喘鳴)。息切れがひどくなる。
・ 全身症状が強い場合
高熱(38.5℃以上)が続く、または急激な寒気・震えを伴う。倦怠感や体が異常にだるい。
発熱に加えて食欲不振や吐き気を感じる。
・咳の内容や持続に異常がある場合
空咳が2週間以上続く。夜間に激しい咳が頻繁に出る(喘息や百日咳の可能性)。突然の激しい咳が続き、治まらない。
・ 痰の性質や見た目が異常な場合
血痰が出る。ピンク色の泡状の痰(肺水腫の可能性)。黄色や緑色の粘り気のある痰が大量に出る(感染症の疑い)。
・胸部に異常がある場合
胸の痛みがある(特に深呼吸や咳をした際に強く痛む)。胸部が圧迫されるような感覚や、異常な違和感。
・その他の重要なサイン
体重が急激に減少している。
声がかすれる(喉頭の異常の可能性)状態が長く続く。
飲み込むのが困難になる(嚥下障害)。

配信元: Medical DOC

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