●「優れた作品を世に届ける使命」の名のもと、見過ごされた被害はないか
──今回のようなケースでは、事実関係の解明に加え、編集部の判断プロセスやガバナンスの問題など、どこに調査の重点を置くべきでしょうか。
今回の問題の本質は、個人の逸脱行為にとどまりません。組織が何を知り、どう判断したのかという、企業組織としての意思決定の構造にあります。
第三者委員会には、「何が起きたか」という事実の記録だけでなく、「なぜ、この企業組織で今回の事件が起きたか」という根本原因に迫る分析が求められます。
出版業界には、優れたコンテンツとクリエイターを世に届けるという使命があります。
しかし、その使命感が時として「作品のためなら」という判断を生み、コンプライアンスや人権への配慮を後回しにする土壌につながっていないか。そうした点まで踏み込んだ分析が必要です。
第三者委員会には、個別事案の検証にとどまらず、業界特有の構造と文化にまで踏み込んだ検証が期待されます。
●「セクシー田中さん問題」で第三者委員会を設置すべきだった
また、小学館は2024年の『セクシー田中さん』問題でも、クリエイターとの関係のあり方について社会から厳しい批判を受けました。
今回の作家の再起用はそれ以前の出来事とされていますが、二つの問題が相次いで表面化したという事実は、小学館の組織文化に構造的な課題があることを示唆しています。
表面的な再発防止策では不十分である可能性があります。
『セクシー田中さん』問題の際にも、内部の調査委員会ではなく、第三者委員会を設置して、組織の深部にある構造的問題を徹底的に検証すべきだったと思います。

