●メディア企業であるがゆえの固有の論点とは
今回の問題を考えるうえで、メディア組織に固有の構造的な論点もあります。
「編集と経営の分離」は、編集現場の表現の自由を守るための重要な原理です。しかし、その原理が、時として、人権やコンプライアンス上の問題に対する組織的対応を妨げる壁として機能してしまう場合があります。
今回の問題は、「悪意ある個人の問題」ではなく「善意で設計された制度の反面で生じる弊害」として捉える必要があります。そうした視点が、再発防止を考えるうえで重要だと思っています。
これは、フジテレビで指摘された「原局主義」と本質的に通じる問題です。
また、クリエイターと編集者個人の間の共生的または非対称的な関係性も今回の問題の要因として考えられます。
コンプライアンス体制の整備が求められにくい非上場企業では、こうした問題がさらに増幅されます。第三者委員会には、組織の深部にある構造的な原因を照らし出すことを期待しています。
●罪を犯したクリエイターを別名義で再起用すること
──過去にわいせつ事案で刑事処分を受けた作家が、別名義で原作者として起用されていたことが問題視されています。このようなケースで、出版社はどのような判断や確認をすべきだったのでしょうか。また、その判断過程の適否は、第三者委員会の調査対象になり得るでしょうか。
再起用について、「是か非か」を単純に結論づけることは難しいと言わざるをえません。
刑事処分を終えた人が社会に戻り、働く権利は守られなければならないという側面もあります。しかし同時に、被害者の救済との間で衝突が生じる場合もあります。
その意味で、今回問われるべきなのは「再起用そのものの是非」よりも「判断プロセスの透明性と誠実さ」です。
小学館の発表や報道によれば、編集者が作家と被害者との和解協議に何らかの形で関与していたとされています。
ただし、その関与の具体的な内容については、小学館側と被害者側で説明に差異があり、まさに第三者委員会が解明すべき核心的な事実といえるでしょう。

