数多くの被災地に入り医療支援を行ってきた経験から、“本当に使える”防災情報を発信する辻直美さんに、「生存率を下げるNG行動」を教えてもらいました。

「命を守る行動」への誤解
『最強版プチプラ防災』を上梓した防災のプロ、辻さんが指摘するNG行動は以下の7つです。1)すぐに外に出る
地震が発生したら、すみやかに防災リュックを持って避難! と思っていませんか? 実はこれ、防災意識が高い人ほど陥りがちな間違いなのだそうです。
「揺れた、あるいはJアラートが鳴ったと思ったら、まず行うべきは周囲の確認です。倒れてくるもの、落ちてくるものがない場所へ移動し、頭を守りながら揺れが収まるのを待ちます。揺れている最中に行動を起こすほうが危険です」
すぐに外に出ると、看板などの大きな落下物や割れたガラスに襲われる可能性もあります。避難するとしても、それは揺れが収まったあと。家やオフィスの中の安全な場所を、普段から意識しておくことが大切です。
2)火を消しにいくかつては、地震が起きたら「すぐに火の始末を!」と言われていました。しかし、それは昔の話。現在はガスにマイコンメーターが設置されており、一定程度の揺れを検知すると自動的にガスの供給がストップします。
「揺れているなか、火を消そうと無理をする必要はありません。むしろ、物が多いキッチンは家の中でも危ない場所。『キッチンにいたら、すぐに離れる』というイメージをしておきましょう」
安全に避難できるよう、キッチンペーパーやふきんなど燃えやすいものはコンロ周りに置かないこと、キッチンはできるだけものを出しっぱなしにしないことも大切です。
3)フリーズしてしまう「経験したことのない揺れに襲われ、恐怖からまったく動けなくなってしまう人がいます。これは、普段から『災害が起きたら』を具体的にイメージして備えておくしかありません」と辻さん。
100%の安全をつくることはできませんが、防災対策をしておくことで、パニックになったりフリーズしたりすることは避けられるはずです。
「家の中の『落ちる』『倒れる』『移動する』『飛ぶ』への備えをしていきましょう。お金をかける必要はなく、100円ショップの滑り止めシートや耐震ジェルで十分。一度に家中の防災をしようとすると、途中で心が折れてしまいます。少しずつ、地震に強い家をつくっていきましょう」
まずは周囲を確認して安全を確保
4)SNSに頼る地震が起こると、すぐスマホを手に取り、SNSで何が起きたのか確認する——という方は多いのではないでしょうか。
でも、「揺れた瞬間に真っ先にスマホで状況確認をするのは×」と辻さん。先ほどもあったように、周囲を確認して安全を確保するのが最初のアクション。情報収集は“その後”の話です。
「被災生活をサバイブするには情報は必要で、SNSも役に立ちます。でも、流れてくる情報はあなたに必要なものとは限らないし、真実でない可能性もあります。すぐに鵜呑みにしたり、リポストしたりするのは避けましょう。普段から信頼できる情報源をフォローしておくことをおすすめします」
情報の真偽を確かめる習慣をつけるなど、SNSとの付き合い方も日頃からのトレーニングが必要なのかもしれません。
5)すぐに帰りたがる
勤務先や外出先で被災すると、「どう家に帰るか」を考えるもの。しかし辻さんは、「気持ちはわかるけれど、安易に帰ってはいけません」と言います。
歩いて帰っても大丈夫な目安は「平時で徒歩30分圏内の距離」。それ以上であれば、会社に留まるか、外出先近くの避難所に身を寄せるのが無難です。
「大地震のあとの道は、がれきで荒れていたり、街灯が消えて真っ暗だったりして、安全に通行できる状態ではありません。普段30分で帰れる距離でも、2時間はかかります。家が心配なのは当然ですが、ここでもいちばんに考えるべきは『身の安全』です」
6)閉じ込められたときに大声を出す「倒壊した家屋やがれきに閉じ込められると、恐怖で焦り、大声で助けを呼びたくなります。でも、叫び続けるとのどを傷め、体力を消耗するばかり。声を出すのは人の気配を感じたときです」
SOSを発するにも、効率的な方法があります。
「傘などの金属製のもので周囲の壁を叩いてください。この音のほうが人の声よりも探索機に反応しやすく、気づいてもらいやすいのです。ただし、このときも闇雲に叩き続けるのではなく、30分に1回程度の頻度で。体力を温存します」
7)地下からは一刻も早く脱出地下街や地下鉄で地震に遭うと、閉じ込められるのでは、倒壊するのではと不安になりますよね。しかし、だからといって焦って非常階段へ向かうのはNG。むしろ二次災害を招きかねません。
「いちばん危険なのは、人が殺到して群衆雪崩が起きることです。係員の指示に従い、焦らず行動しましょう。『みんなが行くから』と周りの人についていくのも危険です。人の判断に乗るのではなく、状況を見て自分で判断しましょう」

