「とりあえず、ばくてん行こか」って声が、布施の夜にはよく似合う。
地鶏と魚と、季節の野菜。きちんと選ばれ、きちんと手をかけられたものが、気取らずそこにある。割烹仕込みの腕前で、今日の一品を仕立ててくれるこの店には、ほどよい緊張感と、静かな信頼がある。
暖簾をくぐれば、ちょっとだけ背筋がのびて、でもちゃんと肩の力が抜ける。布施でごはんに迷ったら、たぶん、ここです。

“ばくてん行こか”が、合言葉みたいに
ちょっとお腹がすいたときも、ちゃんと食べたい夜も。誰かの歓送迎会や、ひさしぶりの同窓会でも。布施の人たちが口をそろえて名前を出すのが、「地どりと魚菜 ばくてん」。

カウンター、掘りごたつ、テーブル席。何人で来てもフィットする器のような空間に、いつの間にか落ち着いてしまう。会社員も、地元の組合の人たちも、「あそこ行っといたら間違いない」と言う。そんな安心感が、ここにはある。
炭の香りと、やさしさの裏ごし
厨房に立つのは、ちょっと強面に見える店主。でもそれは、食べものに向き合うときの真剣さゆえ。北新地の割烹で長く修行を積み、一流ホテルの現場も経験してきた、正真正銘の“料理人”だ。

一品一品を雑に出すようなことはしない。魚の下処理も、焼き物の火入れも、盛りつけも、見ていればわかる。割烹で培われた丁寧な所作が、日々の料理のひとつひとつに息づいている。
会計のとき、「ありがとうございました」と柔らかく微笑んでくれるその一瞬に、ふっと緊張がほどける。初めてでも、なんとなく“また来たくなる”理由が、そこにある気がする。

そして、席につくとさりげなく手渡される手書きのメニュー表。今日選ばれた魚や野菜が、丁寧な筆致でつづられている。声に出して選ぶたび、ちょっとずつ店主との距離が近づいていく気がして、それがまた心地いい。
