私が50代に入ったころのことです。何げなく交わされた職場でのひと言が、今でも胸の奥に残っています。その言葉は強い口調でもなく、責められたわけでもありません。それでも、なぜか深く刺さりました。
笑顔で告げられたひと言
当時、子どもは11歳。小学校高学年になり、少しずつ手が離れてきたとはいえ、まだまだ気にかかる年ごろでした。私は家計を支えるため、職場でパートを続けていました。仕事と子育ての両立で慌ただしい毎日でしたが、自分なりに前向きに取り組んでいたつもりです。
そんなある日、新しい業務に挑戦してみたいと年上の同僚に相談しました。すると、Aさんはにこやかにこう言ったのです。
「もうお母さんなんだから、無理しなくていいんじゃない?」
悪気はないのだとすぐにわかりました。それでも、その瞬間、胸の奥がすっと冷たくなりました。まるで母親になった時点で、新しいことに挑戦する資格を失ったかのように感じてしまったのです。
笑って受け流した後の本音
その場では「そうですね」と笑って受け流しました。しかし帰宅してからも、その言葉は頭から離れませんでした。
子どもを持つことと、自分自身の成長を望むことは両立できないのだろうか。
母親であることと、新しいことに挑戦することは相反するものなのだろうか。
悔しさとも戸惑いともつかない感情が静かに込み上げてきました。自分が傷ついた理由をうまく言葉にできないまま、何度もその場面を思い返していました。

