私が50代になったころの話です。数年前、私は認知症の母を自宅で介護していました。あのときの出来事は、今でもはっきりと覚えています。母の「大事なお金がなくなった」という叫び声から始まった、忘れられない1日でした。
几帳面だった母の変化
母はもともと、とても几帳面な人でした。特にお金の管理には厳しく、家計簿も長年きちんとつけていました。しかし、認知症が進むにつれて様子が少しずつ変わっていきました。
財布の中身を何度も数え直したり、「お金が盗まれた」と突然言いだしたりすることが増えていったのです。そのたびに「大丈夫だよ」と声をかけ、家族で一緒に確認する日々が続いていました。
突然の大騒ぎと家中の捜索
ある日、母が突然大声で「大事なお金が全部なくなった!」と叫びました。慌てて財布を確認すると、たしかに中は空っぽでした。母は興奮し、「誰かが盗った」と言い張ります。家の中は一気に緊迫した空気に包まれました。
家族全員で部屋中を探しましたが、どこにも見当たりません。焦りと不安が広がる中、私はふと「もしかして自分で隠したのでは」と思いました。
そこで、普段は触らないような場所まで探してみることにしました。すると、タンスの奥にしまってあった古いハンカチの中から、丸められた1万円札が数枚出てきたのです。さらに、押し入れの布団の間、冷蔵庫の野菜室、靴箱の中など、思いも寄らない場所から次々と現金が見つかりました。

